事業報告2007〜2012

■劇場技術者寺子屋/音楽編「ステージマネージャーの仕事を学ぶ」の実施報告

日 時:2013年2月25日(月)14時30~16時30分

会 場:新宿文化センター 和会議室

主 催:日本劇場技術者連盟

共 催:埼玉県舞台技術協議会、一般社団法人日本音響家協会

 

講 師 

◎内田陽子氏

福岡県出身。慶應義塾大学文学部卒業。

1996年株式会社テレビマンユニオン入社。

プロデューサー兼ツアーマネージャーとして『フェルメール・クァルテット』や『ジュリアード弦楽四重奏団』など国際的な弦楽四重奏団の来日公演に数多く携 わる。『アマチュア室内楽フェスティバル』や『秋田ワールドゲームズ2001』といった国内外のイベントでの音楽制作の現場でも力量を発揮する。

◎山形裕久氏 

一般財団法人貝塚市文化振興事業団 専務理事・業務執行理事、貝塚市民文化会館館長・劇場総監督/音楽プロデューサー

有名アーティストのコンサートツアーの演出、舞台監督、舞台美術などを多数手がけている。

文化庁委嘱事業・芸術文化活動支援員、貝塚市吹奏楽団顧問、コスモス混声合唱団顧問、(社)全国公立文化施設協会/課題検討委員会・自主文化事業委員会委員

(財)地域創造/ステージラボ講師、日本舞台監督協会、日本音響家協会、日本照明家協会会員、日本劇場技術者連盟副理事長

 

●YouTubeで記録ビデオを公開しています。

その1

 

その2

 

その3

 

内田氏(左)と山形氏(右)
内田氏(左)と山形氏(右)

日本に初めてステージマネージャ職が導入されたことなど、歴史的な面の内容にも及び、また海外アーティストを招聘するときの苦労話など、マネージメントに至までクラシック音楽コンサート全般のセミナーとなった。

北海道や東北からの参加、学生さんの受講も目立ち、活発な質問も出て有意義なセミナーとなった。

終了直前に栃木で大きな地震があり、その緊急情報が全館に流れて驚いたが、これで地震情報システムについて認識することもできた。

交流会には楽器演奏をする参加者が多く、このセミナーに直結した話題となって、ここでも学ぶことが多かった。

懇親会
懇親会

 ■第1種、第3種劇場技術者検定講座 大阪・貝塚市開催報告

開催日:2013年2月21日(木)~22日(金)

会 場:貝塚市民文化会館/コスモスシアター中ホール

 

特別講義として「能舞台ワークショップ」を実施した。

 

■音のゼミナール「コンプレッサーで音に彩りを!」の報告

開催日:2012年12月10日(月)14:30~16:30

会 場:新宿文化センター第1会議室

主 催:一般社団法人日本音響家協会

共 催:日本劇場技術者連盟

講 師:昆布 佳久 氏

1977にNHK大阪放送局に入局。その後、NHK放送技術局 番組技術センター、NHKテクニカルサービス(現・NHKメディアテクノロジー)、NHK放送技術局 報道技術センター 中継制作、NHK名古屋放送局 技術部チーフエンジニア、NHK和歌山放送局 技術部チーフエンジニアの後、NHKを退職。現在は株式会社 綜合舞台に勤務。

担当した主な番組は、NHK歌謡コンサート、Mt.フジ・ジャズ・フェスティバル、東京ジャズ、ニューオリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・ミュージック・フェスティバル、赤道音楽祭、各種スポーツ中継、番組テーマやみんなのうた等のスタジオ録音、各種ドキュメンタリーの取材・MA、。

番組で関わったアーティストは、クラシック、ロック、ジャズ、歌謡曲、民族音楽などジャンルを超えて多彩。

 

昆布佳久氏の "コンプレッサで心地よい音を創りだす秘めたる職人技の講習会" と銘打ったセミナーは、大好評でした。

受講者からは、"目から鱗" "勿体ないほどの内容" などの声が聞こえてきました。

匠のコンプレッサ技法による収録音楽もたっぷり聞かせていただいて、心地よいセミナーでもありました。

終了後は、4時間にも及ぶ飲み放題の大忘年会。大いに語りあい、来年もこのうよな有意義なセミナーを開催することを誓いつつ散会となりました。

講義の模様
講義の模様
懇親会
懇親会

◆受講者の感想

◎いいセミナーでした。日常使っているコンプも扱い方のちょっとした工夫で素晴らしい音に変身する「技」の素晴らしさに、改めて昆布さんのあくなき探求心と、確かなハードの知識から生み出される音の変身に驚かされました。(大阪・今城正二さん)

◎正直、今までの講座で最も難解な内容でした。それでいて、最も興味をそそられる内容でした。講師の昆布さんが冒頭で言われたように、コンプレッサーとリミッターの区別が判らないレベルの私ですが、コンプレッサーの使い方で過激なまでに音というものが変わることに、文字通り目から鱗の感動を覚えました。プロの仕事とはこういうものかと認識すると共に、連盟や協会会員の技術レベルの高さに興奮しました。(群馬・平野 克明さん)

◎中身の深さと解りやすい説明に、あっという間の時間経過、セミナーの続編を是非お願いします。(京都・深尾康史さん)

 

■JAZZ in FUCHU 成功裏に終了

2012年10月14日(日)、東京・府中市で行われた「JAZZ in FUCHU」を音響部門で支援しました。

八板副理事長(日本音響家協会会長)以下総勢17名のメンバーが9時に集まり、揃いのTシャツを着用し、第2ステージ組と第6ステージ組に分かれて仕込みに入りました。

第6ステージは6団体が熱気あふれる演奏を行いましたが、3回目のバンドを終えた頃に惜しくも雨が降り始め、サポートメンバーも実行委員会の皆さんを手伝いテントを増設。その後のステージに臨みました。(報告:米本麻紀子)

 

◎プロジェクト統括からの報告

このイベントの主催は、市民ボランティアで立ち上げたJAZZ in FUCHU実行委員会です、ジャズを聞いたこともない委員も多かったのですが、25会場で109バンドの演奏を繰り広げ、見事に成功させました。

本協会の参加趣旨は、サボートスタッフの伊代野正喜さんがおっしゃるように、「協会の設立趣旨には "音響技能を通じて広く国民の芸術創造活動を支援することで、日本の芸術文化の振興に貢献したいと存じます。" とあり。また、その定款「目的及び事業」には、"市民及び青少年の芸術創造を支援助長するためのボランティア活動"  "演劇の公演、演奏会等の主催及び共催" と明記してあり、今回の活動はまさにこの趣旨と目的事業に沿った活動であった」ということです。

また、別の目的もありました。それは、ストリート演奏に対して地域住民や商店街から騒々しいという非難の声から回避するための音を創造することでした。 そのため、各地の同類のイベントの情報を収集しての挑戦でしたが、案の定、会場を提供してくれたデパートと銀行に挨拶に伺うと、「今年はあまり大きな音にしないようにお願いします」と念を押されました。

私たちの基本概念は、「モニタースピーカを使用しない」「SRスピーカはバンドの後方に設置(北海道支部坪田栄蔵氏の助言)」「電気楽器は自前のアンプで鳴らす」「SR音量はステージ周囲の観客だけを対象に」「劇場ではないので演奏者は横に広がらず演奏しやすいように互いに近づくように」「ボーカルとソロ演奏の音を最適かつ最大音量とする」「個々の楽器のサウンドチェックは行わない」であって、このことはバンドとの事前打ち合せ会で丁寧に説明しました。

その成果を、このイベントのご指導役であった及川公生氏は「演奏グループが、なにくわぬ顔で、せっせと自分たちの持ち分のみに専念して、音量を上げろとか、聞こえないとか、何のクレームもなく、淡々と演奏に没頭していたことに驚きました。これは、事前にかなりしつこく、こちらの作戦を伝授し、協力を求めたなと、察しました。電子ピアノの音量と言い、持ち込みの電気楽器のモニターの音量と言い、自ら爆音を避けていましたね。チューバがクリップマイクとPAを持ち込んだのは驚きました。」と評しています。

また、もう一人の指導役の増旭氏からは「ステージのすぐ前後に大きなビルが有り,左右は抜けていましたが、野外としては残響(反射)のある空間になっていました。それゆえに、今回のような拡声しすぎないPAは理に叶い大成功だと思います。静かに始まった、キーボード(ピアノ)、ベース、パーカッション(カホーン)の編成の水岡グループが一番手というのも幸いしました。 出演バンドのほとんどが、生音に近いレベルでPAできたのは最高でした。おかげでボーカルも最適なレベルに設定できました。スピーカの選定も、このような場所にはうってつけでしょう。もしもドライバーとホーンに制御された通常のシステムを選んでいたら、向かいビルの壁からのフラッターエコーに泣かされたと思います。」と振返っています。

さらに、サボータとして参加した東日本支部運営委員の坂下雄一氏は「業者に委託するものとは違う協会ならではのスタイルであったと思います。現場的なところでは、さすがに皆さんプロの集まりだと感じましたし、色々なお話をさせていただく中で改めて考えさせられる部分もあり私も大変勉強になりました。」と述べています。

富山から参加した山本広志氏は、他の会場も見て回り"「けやき音楽祭」のスタッフの様子ですが、実にイキイキと動き回っていました。私もスタッフTシャツを着させていただいていたのですが、どこに行っても「お疲れ様です」と声をかけられ、連帯感が生まれていました。途中、雨が降るなど突発的な事案にも一生懸命に対処している姿は、多少のトラブルがあってもお互いに理解し運営に協力している体制を醸し出していました。演奏家もスタッフも少なからず不平不満があったかもしれませんが、それを口には出さず、一緒にイベントを楽しんでいました。これが街中で聞く聴衆にも伝わり、街全体が活気のある音楽を楽しむ雰囲気を作り出していました。その光景は、まさに「素晴らしい」の一言でした。" と北陸支部の会報に書いています。

いずれにせよ、これは「市民及び青少年の芸術創造を支援助長するためのボランティア活動」であって、他の会場を東京工科大学の学生たちが音響支援をして、洗足音楽大学のバンドがバレードしながら各会場を巡回していました。今後、このような形の参加が増えることを期待したいし、この形が全国に広がることを期待します。

この支援プロジェクタをサポートしてくれたのは、専門学校学生、舞台監督、大学職員、元設備設計技術者、輸入機器販売会社社員、音響機器メーカー社員、公共ホール職員、公共ホールボランティアスタッフ、主婦、元俳優、プロの音響エンジニアの皆様で、異業種の方々が一つになって、黙々と作業している姿に感動しました。これを機会に絆が生まれ、フェースブックの友達になった人たちもいます。

ボランティアで得られるのは、お金では買えない充実感であって、評価や褒め言葉を期待して行うものではないのです。自分の仕事とか立場から解放されて、邪心を捨て、ひたすら一生懸命にやることが肝心です。是非、プラス思考でこのようなイベントに参加されることをオススメしたい。

なお、この事業はボーズ株式会社と株式会社エヌエスイーの機材提供、そして日本劇場技術者連盟の共催で実現できました。

 この一日、実行委員、観客、そしてプレイヤーの素敵な笑顔が絶えることはありませんでした。これが生演奏の醍醐味なのでしょうか。(報告:八板賢二郎)

◆主催の実行委員の感想

◎音響スタッフの皆様、雨のトラブルにも的確な判断をして頂きお陰様で無事最後まで終えることが出来ました。ありがとうございました。感謝致します。

◎本当にありがとうございました。北口とフォーリス、どちらも音が他と違いました。匠の技を学びました。次回もぜひ力を貸してください。本当にありがとうございました。

◎JAZZ in FUCHU 公式サイト http://jazzinfuchu.net/

JAZZ in FUCHUの観衆
JAZZ in FUCHUの観衆

■特番「音のゼミナール」の実施報告

開催日:2012年9月10日(月)

会 場:豊島区民センター/第5会議室

主 催:一般社団法人日本音響家協会 

共 催:日本劇場技術者連盟

音響機材提供:株式会社エルシー電機 

1部は、今年、日本音響家協会賞を受賞された永田音響設計の豊田泰久氏の講演の再上映でした。豊田氏が音響設計で携わった国内外の数々の有名なコンサートホールの成り立ちや構造などを実物や模型などの映像を交えて、詳細に紹介されていて、大変、勉強になりました。特に、興味深く感じたのは、アメリカでは、日本と異なり公共ホールが税金で建てることができず、寄付に頼っているため、景気の影響を受けやすく、ロサンゼルスにあるウォルト・ディズニー・コンサートホールは、設計から完成まで14年の歳月を要したとのことです。

豊田氏は仕事の都合で来場がかないませんでしたが、上映後に、同社の服部暢彦氏が会場からの活発な質問に応答され、こちらも勉強になりました。

▲服部暢彦氏
▲服部暢彦氏

2部は、本連盟主催の西洋音楽の講座でも講師をされた三好直樹氏(明治座舞台株式会社 管理営業部営業部長)による講演「シンフォニーホールの管理運営とクラシック音楽のレコーディング」でした。

同氏は音響技術者として、東京芸術劇場などをはじめ、さまざまな現場で長く活躍されており、その実践に裏打ちされたお話は、実に有益なものでした。

▲三好直樹氏
▲三好直樹氏

 実に多くの役に立つお話があったのですが、紙数に限りがあるので、そのごく一部をご紹介します。

外界と完全に音が遮断されるシンフォニーホールで大切なことは、「よい音、静けさ、よい響き」を実現することです。よい音とは、フラッター等の音響を阻害する音を発生させないこと。静けさとは、外部・内部からの騒音侵入を阻止することにより、静粛性を確保すること。そして、よい響きとは、音楽に美しい響きを加味することです。

これらを踏まえて、劇場技術者は、空調・照明・音響設備の経年劣化による異音などを常にチェックし、確認されれば、それに即座に対応する必要があります。三好氏も実際に、ホール内でチリチリという異音に悩まされ、永田音響設計による調査で、受電トランスの防振ゴムの劣化によるものと判明し、対応したことがあるということでした。このような些細なことでも、コンサートホールには大きな影響があるということが理解できました。

また、是非実践したいと思ったことは、演奏中はスピーカ出力を切り離し、音響事故が起きないようにするということです。通常のホールであれば、いくつものスイッチの入り切りが必要になる作業で、実践は困難ですが、東京芸術劇場は改修により、マスタースイッチが付いたため、容易にこの作業ができるようになったそうです。

また、改修しても替えてはならないものもあるというのは、非常に参考になりました。それは、演奏モニターなどのアナログ機器です。この理由は、デジタル伝送化により、画像・音声モニターなどに遅れが生じるので、注意が必要とのことです。

このほか、ステージマネージャーの仕事、ホールスタッフの禁止事項、そして、クラシック音楽の録音の実際など実に有益な内容でした。特に、録音方式の違いによる実際の音の聞き比べは、興味深く、もっと時間を取り解説していただきたいと思いました。

最後に、三好氏の言葉で最も胸に刺さったのは、劇場技術者も「音の内容」、つまり、ブラームスとベートーベンの違いくらい理解してほしいという言葉です。さらに言い換えれば、劇場で演じられるものの本質を理解した上で、劇場技術者の仕事をすべきであるということでありました。襟を正して、再度勉強しなおしたいと思いました。

なお、今回の講座の2部の模様は、U-streamでネット配信されました。今後の講座のネット配信については、随時、本ホームページでチェックしてください。

 

◎懇親会

予定外でしたが、会員のお奨めのうなぎ屋「うな達」で開催されました。地上には小さな看板があるのみで、まさに穴場といえるお店で、おいしいうなぎ料理に舌鼓を打ちながら、にぎやかに音響家協会と連盟会員の懇親を深めたのでありました。

 

◎PAスピーカ

PAの音漏れに気配りして、一般的PAの含み声が無くて生に聞こえるスピーカを株式会社エルシー電機から提供していただきました。その効果は抜群でした。

 

■第1種、第三種劇場技術者検定講座 宮城県実施の報告

開催日:2012年8月18日(土)~8月19日(日)

会場:中新田バッハホール

講師:照明/千田敬、舞台進行/小松正俊、音響/八板賢二郎

共催:中新田バッハホール

受講者数:24名

 

中新田バッハホールの清水館長をはじめ、ホールスタッフの方々のサポートで無事終了しました。筆記試験終了後は、館長によるパイプオルガンのワークショップが開催され、受講者に演奏もさせていただきました。

今回から照明の講師を岩手県/北上市文交流センターの千田氏にお願いして、今後、東北の劇場技術者の育成と確立をめざすことにしています。

東北の優秀な劇場技術者たちとの交流も叶って、この講座のさらなる発展が期待できそうです。

 

▲照明の講義
▲照明の講義
▲受講者どうしが教えあうケーブル8の巻き実習
▲受講者どうしが教えあうケーブル8の巻き実習
▲パイプオルガンのワークショップ
▲パイプオルガンのワークショップ

■製作現場を見に行こう「大道具編」

金井大道具株式会社シーンテックさいたま美術センター見学報告

2012年6月11日に、劇場技術者なら知らない者はない金井大道具株式会社のシーンテックさいたま美術センターを見学した。埼玉県さいたま市にある本工場は、歌舞伎・テレビ・イベント・コンサートなど様々な分野で使われる大道具を製作している日本最大級の大道具製作工場である。

場内はイベント用と芝居用の大道具製作エリアが殆どを占めており、材料の木材、ベニヤ板、工作機械などが周辺に配置され、様々な大道具が忙しく組み立てられていた。大きな幕類の製作もあるため、天井までは30尺以上の高さとのこと。その他に、カッティングマシンの置いてある工作室、経師が作業するエリア、幕類を製作保管するエリアなどがあり、約30人がその製作現場で作業をしているそうだ。

まず、イベント用の大道具製作の現場を見学した。その作業工程は、クライアントから製作するもののデザイン画を基に「書き抜き」と呼ばれる設計図を起こす。それから「合番(あいばん)」と呼ばれる施工図にあたるものを起こし、それを基に製作に入っていく。見学した際には、有名化粧品会社から発注されたもので、鉄骨ワゴンの骨組みの上に、約15ミリ(=5分)ほどの厚ベニヤを張り、組み合わせる作業を行っていた。最近は、大道具が大型化し、強度を確保するため、鉄骨を使用することが多くなってきているそうだ。これらの大道具は、使用後はすべて廃棄される。木製のものは産業廃棄物となるが、鉄はキログラム当たり13円ほどで売却されリサイクルされるそうだ。

その後、最新鋭のカッティングマシンを見学。実際に動いているところが見られなかったのが残念だが、コンピュータ制御で、木製・紙製のボードを設計図通りに綺麗に且つ緻密に切削する機械とその機械によって製作途中の作品を見ることができた。今までなら、職人的なスタッフによる手作業で、多くの時間を費やして仕上げた作品も、短時間で完成するようで、かなりの経費節減につながると思えた。

その他の作業現場もじっくりと見られたことにより、大道具の製作過程を体得することができ、とても有意義であった。

ところで、この大道具の製作現場でも忘れてはならない一番大事なことは、「安全」であった。

今回の見学会は、同社安全衛生管理室の小倉直一氏と長谷部俊一氏のお二人に工場内を案内していただいた。お二人は現場の安全管理のために日常点検を行い、危険につながることがあれば、それをチェックし課長に報告、現場にフィードバックして、危険回避につなげている。そのお二人の話にあったことは、私たち劇場の現場でも通用することなので、以下にその要旨を述べたい。

事故や怪我があれば、その当事者が不幸になるばかりでなく、多くの人がその対応や後処理に巻き込まれる。ことによっては、労基署からの指導改善などにも時間と費用を割くことになる。それは、会社の経営にまで影響することなので、事故と怪我はなんとしてでも避けたいことである。そのために、様々な安全対策のためのマニュアル作成や啓発のための張り紙をしているが、より大切なのは、現場での危険回避のための「声がけ」であるとのことだった。

さらに、見学会の最後の挨拶で、八板副理事長が自身の経験を交えて「安全に仕事をするには、舞台・音響・照明という部署を越えて飲み会などをしてお互いを理解することが大事」と言われた。これが意味することは、部署を越えてコミュニケーションを密にすることにより、「声がけ」が容易になり、安全確保につながるということである。

簡単なことであるが、なかなか実践されないテーマであると、深く反省した次第である。

恒例の交流会が、大宮駅そばの居酒屋「力」で開かれた。

見学者の多くが参加し、今回は副理事長の一人で、現在京都造形芸術大学で教鞭をとられている小坂部恵次氏のご発声で乾杯をした。

このように日本のトップクラスの技術者と差し向かいで、ざっくばらんに会話できるのは、連盟の素晴らしいところである。私も、多くの劇場を知る理事長から有益なアドバイスを受けることができ実に有意義で、そのうえ和やかで、楽しいひとときを過ごすことができた。(報告:平野克明)

乾杯の音頭は小坂部さん
乾杯の音頭は小坂部さん

■劇場技術者寺子屋「舞台監督の仕事を学ぶ(演劇編)」報告

日 時:2012年4月16日(月)

会 場:新宿文化センター 和会議室

共 催:埼玉県舞台技術協議会、一般社団法人日本音響家協会

講 師:大木 玉樹

新国立劇場スタッフやFIFA日韓ワールドカップなど、多種の経験を積み、演出やプロデューサーなどマルチな活動をしている。

講 師:藤崎 遊

海外公演の多い国際派の舞台監督。最近の仕事は、宮本亜門演出『金閣寺』で凱旋公演、新国立劇場「天守物語」、シアタークリエ「ミュージカル/GOLD~カミーユとロダン~」など。

 

定員を超える受講者で、成功裏に終了しました。

講義の模様
講義の模様
講師の大木玉樹氏(左)と藤崎 遊氏
講師の大木玉樹氏(左)と藤崎 遊氏

 

寺子屋の後、17時から交流会を開催され、20時40分まで有意義な一時を過ごしました。

交流会の模様
交流会の模様

◎刺激的だった講演「舞台監督の仕事を学ぶ」

今回の講演は、舞台関係の仕事やそれに興味のある方にはたまらないほど刺激のある講演でした。 

大木氏のお話で興味深かったことは、サッカーの試合などでも、舞台監督的なスタッフが必要だということです。単にスポーツ競技だけを行うなら、審判がいれば試合は成り立つのですが、開始前のセレモニーや放送があればそれに付随する舞台監督的な仕事があります。

また、スポンサーつまりお金を出す人がいる場合、それに付随していろいろなイベントが行われ、スポンサーへの配慮によりさまざまな作業が生まれるそうです。たとえば、スポンサー以外の広告は全てマスキングされるそうです。

また、実際に、サッカーイベントにおける運営スタッフの組織体系と動きを説明していただきました。具体的には、2002年日韓合同のワールドカップの際の組織図に基づき、FIFA(国際サッカー連盟)と日本サッカー協会・各地域サッカー協会の関係を説明。

FIFAのGC(ジェネラル・コーディネータ)→AGC(アシスタント・ジェネラル・コーディネータ)という順位で指揮命令が伝達され→ステージマネージャー(いわゆる進行チーフ、舞台監督に当たるもの)→MC・進行担当及び映像担当に指示が伝達されます。

実際に、2011年に日本で開催されたクラブワールドカップ、サントス対バルセロナの映像を見ながら各部署の動きを説明していただいたので、非常によく理解できました。

第二部は、藤崎氏からフリーの舞台監督の仕事についてつぶさに説明していただきました。

その中で、非常に興味深かったのは、舞台監督という仕事に対する取り組み方であります。舞台監督という仕事や地位は一般には認知・確認されてはおらず、また、賃金においても曖昧で適正価格というものもなく、小劇場を相手とした舞台監督では生活もままならないような状態とのこと。

そこで、横のつながりの少ないこの業界で、藤崎氏は舞台監督同士で集まりワークショップ的にスケジュールの組み方、賃金なども含め「舞台監督の仕事」に関して情報交換をしているそうです。

たとえば、本番を1とした場合、稽古0.5、仕込みとばらしは各1.5という賃金の算出に関する考え方もあるそうで、なるほどと思いました。

そのほか、藤崎氏がどのように舞台監督になったのかという経緯や実際にひとつの演劇作品が上演されるまでの過程を、実体験を基に非常に精確に説明され、且つ、氏ならではの切り口で舞台監督の仕事や作品製作の進め方に関しての問題点を指摘され、また、それらはどうあるべきかのお話を聴きました。

また、最後の質疑応答では、地震時には、どのような状態で、どの時点で公演を中止するかなどの悩ましい問題についてお話がありました。

舞台監督の仕事の「奥」を知ることができ、今後の劇場での仕事にも役立つと感じました。(報告/平野克明・群馬音楽センター)

 

■第1種/第3種劇場技術者検定講座の富山県実施の報告

2012年3月3日(土)~3月4日(日)、富山県・新川文化ホール(ミラージュホール)で、富山県公立文化施設協議会と共同開催しました。

今回は地域のボランティアスタッフ養成を主に開催しました。第三種が13名、第一種が11名の受講でした。

 

◆第一種受講者の感想

◎舞台にかかわる人の心構えや安全や労働等について、また、イベントを開催するに当っての注意事項など、丁寧な講義を聞くことができて良かったです。最初の講義の「なぜ、人は芸能を楽しむのか」について、人が生きていくすべての事にあてはまるのではないかと感動しました。

◎基礎をあらためて見直すことができ、劇場業務への想いが、更につのる日になりました。

◎総合的に舞台の流れや組み合わせを知ることができました。人間の持った創造への要求が、欲望の段階の上に立っていること、またそれが人を人たらしめていることが、よくわかりました。そして、その元には命を守ることをベースに演者・客・スタッフの安全を守ることがあり、その上でクリエィティブな仕事をすることが大事だと分りました。

◎今後の仕事のレベルアップになると想うことが多く、非常に参考になりました。また、安全管理も重要な仕事だと再認識しました。

◎2日間の内容は盛りだくさんで、あっという間でした。これからの仕事にたいへん役立つと想いました。まず、ケガをしない、させないという気持ちを持って、真剣に取り組んでいきたいと思います。

◎劇場技術の基礎的なことから専門的なことまで、楽しく学ばせていただきました。改めて基本の大切さを実感し、初心にかえった気がしました。この気持ちを大切に、今後の業務に、後輩の育成に力を入れたいと思います。

◎有意義な講義でした。基本をわかっていないと、ひとに教えるときに、間違ったことを教えてしまうことがあるので、今回の講義を日々の仕事に反映したいと思います。

 

◆第三種受講者の感想

◎人間の第五の欲望についての講義が心に残りました。ひとに喜んでもらえる仕事をすることに幸せを感じ、これからもその気持ちを忘れずに活動したいと思います。

◎一般利用者から見えない裏側でたくさんの人たちが、いろいろな業務を担って、ようやく一つのステージができあがっていることが良くわかりました。今回は、ほんの一部を学ばせていただきましたが、奥が深く、今後も重ねて学習したいと思います。公共ホールは限られたスタッフで運営されており、スタッフの多能化が必要なこと、それを補うために多数の専門的ボランティアを育てていき、ホールスタッフとボランティアとの協働でホール運営をする体制が整えばよいと思いました。

◎法律に関することは、今まであまり聞くことができなかったので、とても良かったです。あらためて、舞台は危険なところ、事故を防ぐにはコミュニケーションがとても大切なことを理解した。サポータの活動は表方の仕事がほとんどだが、裏方の仕事を知ることは舞台の進行を知ることににるので、これからの活動に役立つと思った。

◎感動した舞台の裏には出演者だけでなく、多数のスタッフが関わっていること。それも、高度な知識と技術を持ち、表に出ることなく。この講座は、演技する者、演奏する者はもちろん、学校教育にて数奏楽や演劇の指導に携わる者も受講すべきであると思う。

◎今後、観客として見るときに、違った目で観ることができ楽しみです。

関連記事(北日本新聞)記事中のボランティア講座とは第3種劇場技術者検定講座のことです。

 

 

■裏方の教養講座『日本の音楽と西洋の音楽』の報告

日本の伝統音楽の流れ、西洋音楽の作曲者の流れについて、実際に音楽を聞きながら、教科書には載っていないような事柄をわかりやすく解説された。

講義の模様
講義の模様

 

 

 

 

 

 

 

西洋音楽の講義をする三好直樹氏
西洋音楽の講義をする三好直樹氏
三味線の解説をする八板賢二郎氏
三味線の解説をする八板賢二郎氏

 

簡素なネット配信を行い、今後のセミナーへ活用するための試みを行った。

ネット配信担当の羽田野晉嗣氏
ネット配信担当の羽田野晉嗣氏

講座終了後は交流会を実施し、照明、美術、音響、舞台監督、舞台進行、メーカー、出版社など、劇場を取り巻く人々による有意義な意見交換が3時間30分にも及んだ。

交流会の模様
交流会の模様

■裏方の教養講座『日本の音楽と西洋の音楽』の報告

日本の伝統音楽の流れ、西洋音楽の作曲者の流れについて、実際に音楽を聞きながら、教科書には載っていないような事柄をわかりやすく解説された。

簡素なネット配信を行い、今後のセミナーへ活用するための試みを行った。

講座終了後は交流会を実施し、照明、美術、音響、舞台監督、舞台進行、メーカー、出版社など、劇場を取り巻く人々による有意義な意見交換が3時間30分にも及んだ。

 

日 時:2012年1月30日(月)13:30~16:45

会 場:新宿文化センター・第1会議室

 

講 師

三好直樹

明治座舞台管理営業部長/元東京芸術劇場舞台技術総括責任者

 

八板賢二郎

ザ・ゴールドエンジン代表/元国立劇場・国立演芸場・国立能楽堂音響担当

 

主 催:日本劇場技術者連盟

協 賛:埼玉県舞台技術協議会、一般社団法人日本音響家協会

機材協力:株式会社エヌエスイー

 

◎「日本の音楽と西洋の音楽」に参加して

高速バスの窓からは富士山と東京スカイツリーがよく見える天気のいい日です。気温は低いのですが暖かい日差しにウトウトするうちに東京駅に着きました。もう数回参加している「裏方教養講座」ですが、今回は人数が多かったですね。

第一部は八板賢二郎氏による「日本の音楽」です。最も古い「雅楽」から「長唄」「浄瑠璃」など日本の音楽の歴史を教えていただきました。

「雅楽」は貸し館でかかわったことがありました。そのとき少しだけ勉強しましたが付け焼刃で覚えたものは終わってしまえばすぐ忘れてしまうもので、八板氏のお話を聞くうちになんとなく思い出してきました。

そして、このままにすると、また忘れてしまうので復習しなくてはと思うのですが、はたして・・・。

また、「荻江節」や「大和楽」など初めて聞くものもあり、奥の深さを実感しました。

そして第二部は三好直樹氏の「西洋の音楽」です。

場の空気にも慣れてきて、暖かな室温と昼下がりの時間帯に優雅なクラシックとくれば、それはもう睡魔との戦いです。冒頭の「ピタゴラス音階」を聞いているうちはよかったのですが、「グレゴリオ聖歌」の荘厳な響きに上下のまぶたは仲良しになっていきました。

「西洋の音楽」については少ない時間ですべてを語れるはずはありませんが、「貴族階級」から「市民階級」へ、さらに「興行」として大編成化していく・・・などなどポイントを押さえたお話しでクラッシックの流れを知ることができました。

そして最後の「音響家としてクラシックの演奏会でするべきことしてはいけないこと」は業務に直結するお話で、たいへん興味深く聞きました。

なぜ椅子や譜面台に触れてはいけないかが、よく理解できました。普段から、持込品の扱いは慎重にしているのですが、楽譜を回収する順番があることは知りませんでした。理由を理解すると他のスタッフにも説明できます。

このような「講座」は、漠然と経験の中で得た知識でおこなってきた日々の業務を、理論的に整理する上でも役にたちます。また、インターネット中継という新しい試みがなされ、地方にいる者としては地元にいて受講できる可能性があり、これからの「講座」にも期待しているところです。

このあとの親睦会では、情報を交換しあったりして楽しい一時を過ごし、充実した一日になりました。

(阿部喜一:有限会社ステージライン)

 

■第1種劇場技術者、第3種劇場技術者検定講座

2012年2月15日~16日、佐賀県・武雄市民文化会館小ホールで開催し、筆記試験の結果、第一種12名、第三種2名が認定されました。

日本劇場技術者連盟、宮崎県音響照明舞台事業協同組合、武雄市文化会館による共同開催、後援は九州公立文化施設協議会、一般社団法人日本音響家協会で実施しました。

鎌田晶博氏の講義
鎌田晶博氏の講義
照明、吊り込みの実習
照明、吊り込みの実習
山台組み立ての実習
山台組み立ての実習

◆第一種受講者の感想

◎普段、何気なく行っていた業務の一つひとつに対して、あらためて重要性を再認識しました。自分の務めている会館に不足していることなど、たくさん気付くことができました。これわ機会に、同じ職場のスタッフにも、この講座で学んだことを伝え、連盟の主催する研修会にも積極的に参加するよう促そうと思います。

◎たいへん有意義な講座を体験でき、舞台業務の安全確保についても再認識しました。

◎講座で学んだことを、仕事を通じて利用者の方々に活かしたいと思います。

◎舞台、音響、照明と幅広い内容で、ものすごく勉強になりました。

◎再認識と新しい発見がありました。

◎舞台進行や照明など、自分の担当以外のことを学ぶことは、チームワーク力を高めるためることに繋がると思いました。

◎日常に潜む危機が分ったので、今後の仕事に活かしていきたい。

◎同じ職種の方々と交流ができて、とても勉強になりました。

 

◆第三種受講者の感想

◎会館のプロの方とご一緒に勉強できたことが、とても嬉しかったです。

◎今年度から多目的ホールに勤務してますが、全くの素人です。受講して舞台の設備や仕込み時の様子などが分りました。今後は舞台演出などにも目を向けて頑張ります。

 

■シンポジウム「地域住民のための快適な公立ホールをめざして」報告

2011年10月27日(木)、"さいたま市民会館うらわ" にて埼玉県舞台技術協議会と共同主催のシンポジウム「地域住民のための快適な公立ホールをめざして』が開催された。

第1部の対談(11:00~12:30)は『舞台進行の役目』と題し、松戸市民劇場の舞台進行を担当する福田義明さんをゲストに迎えて、地域住民が劇場を利用する際の気遣いなど、舞台の進行を円滑に行うための秘訣を披露していただいた。

仕込み時間が30分ほどしかない地域住民のイベントは、カラオケ大会のときは主催者に音のレベルを決めていただいているが、日本舞踊のときは主催者が出演の準備で忙しく舞台に来られないのため、自分たちで音のバランスを決めてしまうなどと、それぞれのジャンルの違いを熟知しての対応をしているという。

最後に、舞台を円滑に進行させるには?との問いに、『流れに乗ることです』と素晴らしい言葉が返ってきた。本番中、突然の変更があったり、トチリがあったりして、打ち合せやリハーサルと違っても、慌てずにその流れに乗って対応できてこそプロということだ。

 

第2部はシンポジウム(13:30~16:00)で、『新時代の公共ホールの運営を考える』と題して、危機管理から利用者応対までを討論した。

バネラーは、舞台美術家の滝 善光さん、行田市教育文化センター責任者の伊藤 勝仁さん、舞台監督の早舩司さん、照明家の今野幸彦さん、亀有リリオホール 舞台担当(副支配人)の飯島正明さん、コーディネータは八板賢二郎さんで、これまでとは一味違った内容のシンポジウムとなった。

 

最新の機材も必要であるが、最新の人材(スタッフ)の存在こそ地域住民のために必要であるというメッセージのもと、火災や地震、事故が起きた場合の対応など、劇場のお客様となる利用者、出演者、観客、外来スタッフに対する応対などについて討論した。

 

シンポジウム終了後は、浦和の名物居酒屋「力(りき)」で懇親会を開催し、大いに盛り上がった。

 

◎シンポジウムに参加して

西畠理(福井県・ハートピア春江)

10 月27 日、さいたま市で行われた埼玉県舞台技術協会と日本劇場技術者連盟主催の合同研修会に参加しました。

まず、午前中は「舞台進行の役目」として、八板(日本音響家協会)会長と松戸市民劇場の福田義明さんの対談がありました。

その中で特に印象深かった言葉をいくつか紹介すると、

・舞台進行はスタッフの窓口であり、対機械ではなく対人とのコミュニケーションスキルが必要。

・プライドは家を出るときに神棚に収めてしまう。

・素人さんにきちんと説明できるのがプロである。

・プロの目指す音と出演者(お客)が目指す音は違うものである。

・マイクロフォンは音響家のものではなく出演者のもの。

・最新の機材だけではなく最新の人材も必要(年齢ではなくスキルの面で)

・スタッフのマルチタスク化が必要である(舞台+営業・音響+照明等)

 

最後に福田さんが言われた「(舞台進行は)当日の流れに乗る」という言葉には大変感銘を受けました。

その後、昼食をはさみ、午後からは「新時代の公共ホール運営を考える」と題し、八板会長がコーディネーターをされ美術デザイナーの滝善光さん、音響オペレーターの伊藤勝仁さん、舞台監督の早船司さん、照明家の今野幸彦さんをパネリストに迎えて行われました。

まず危機管理の面では事故には責任が発生しその中で様々な責任があるが、中でも道義的な責任により信用が失墜することがあげられました。

また、日頃の自覚が重要で、先人(先輩)の経験談・忠告・助言が有効であること、危険な装置は「停止方法」を最初に取得するべきであることも挙げられました。しかし、現在今の若手は先輩を見る(盗む)ことができない、マニュアルがないと動けないという傾向もあるとの声もありました。

危機発生時の対処では、特に地震時には通常震度2 程度までは公演が続行する場合が多いこと、それ以上の震度で観客が騒然とした場合は公演を中断させる判断をすること、震度6 以上では避難も無理なのでその場で身の安全確保をはかることが良いということでした。また、実際の震災発生時にはブリッジの動作ができなくなり作業員が取り残されたことも報告されました。また避難誘導についても客席天井の構造の違い(吊り天井等)により、一概には言えないとのことでした。

 

次に利用者対応に対してのテーマに移り、

・専門家の目線が上から目線になる。

・「知識」だけでは役に立たない。「知恵」を使えば巧くいく。

・誰でも窓口になれる力。

・オーナーシップを持つ(経営者になったつもりで努力すれば自分も成長する)

・出入り業者も大切にする(業者は取引先の様子を見ている)

・従業員のイライラは客をイライラさせる。

・意地悪なメッセージをしない(ここは◎◎ではありません→ではどうしたらいいの?

 

などの話がありました。

こうして改めて話を聞くと、把握していたり、頭では分かっていても実行していなかったりということなど、改めて考えさせられることの多いシンポジウムでした。

このシンポジウムでは答えを見つけたり、こうしなければならないという趣旨のものではありませんでしたが、これから各々の職場で自らの手で改善していく一つのヒントになったかと思います。

 

■劇場技術者談話室「映画館の現況」報告

2011年10月17日(月)、新宿文化センター第3会議室において、日本劇場技術者連盟の主催により映画上映に関する技術セミナーが開かれた。

講師は、映画が斜陽産業と云われた厳しい時代から平成の今日まで変遷する映画界で映写機に携わる機器の現場一筋で仕事をし、アナログ時代を知る渡辺一巳さん。

渡辺さんは、すでに解散を余儀なくされた全日本映画技術者連盟最後のメンバーであり、映画館のみならず、数々の名場面を上演したかつての新宿コマ劇場、開場100年を迎えた帝国劇場など商業演劇劇場音響の第一線で活躍されてきた。

 

講義中の渡辺氏(中央)
講義中の渡辺氏(中央)

今回の劇場技術者談話室のテーマは、「映画館(ムービーシアター)の現況」である。

 

最初は「映画館の歴史」(昭和30年~平成22年)の56年間を全国統計した表をもとに私たち一般の素人にもわかりやすく丁寧に解説して下さった。

1956年のコマ劇場オープンでは、70m/mの「オクラホマ」が上映されたこと、その後、急激に映画が隆盛し1958年には映画館が7000を超え「紅の翼」「十戒」などで入場者11億2千7百50万に迫り最高を記録したこと、その後も「ベン・ハ―」や「鉄道員」などの名作が次々とヒットしたが、テレビの普及もあり1963年の「アラビアのロレンス」のころは入場者が半分に減ってしまったこと、1993年にはシネコンが上陸したが映画館数が最低に激減、その後入場者数も1億2千万を切り凋落を辿ったことなど、映画をこよなく愛する者として懐かしく述懐しながら語ってくれた。

また、映写機の取り扱いについては、ビデオ教材による解説が細かい作業まで取り入れられて大変解り易かった。

さらには、具体的に資料や図面を配布して下さり、「スクリーンサイズの違い」や「ドルビーサラウンドシステム」などの基礎知識を解説してくれた。実際に映画フィルムも見せて下さり、「各方式のサウンドトラック位置」を説明してくれた。

サイレント時代のフィルム縦横比、トーキーからフィルムの左端をサウンドトラックとして使うようになってスタンダード・サイズが確立したこと、ビスタサイズにはヨーロピアンとアメリカンの2種類があり、異なるスクリーン、サイズ比についても説明して頂いた。シネマスコープは洋画ではお馴染の横に長いサイズ1:2.35であること、日本映画もアメリカン・ビスタの1:1.85を使用していることなどなどである。

さらに音響システム関係に触れ、1975年ミュージカル・トミーにてデモンストレーション上映されたドルビーステレオは全世界に普及し、ドルビーA,SR、デジタル、EXと進化していったことや、スピーカのレイアウトの進化までこと細かく説明して下さった。

ここまで聞くと、映画技術者のその時代変化や多種の上映方式に対応する技術への奥深さが伝わってきて目が開かれる。その高い技術力を見事に駆使するプロフェッショナルさに同じ技術に携わる者としては、尊敬と感動の念が湧いた。

完成試写会のときに、制作スタッフから誉められることもあるが、フィルム上映への厳しい意見を出される場合もあるそうだ。現場の苦労など関係ない意見も出て困ることもあるが、「可能な限りの対応で何とかカバーする努力をする」と笑っておられた。

演劇の演出家のなかにも技術者の苦労が分からず勝手にことを言う人がいる。それでも何とかしようとする技術者の意地と悲哀が垣間見えて同感させられた。

素晴らしい人を感動させてくれる映画は、クリエータだけでは存在しえない。映画館やホールで上映する現場での戦いが最後の勝負だったのである。観客からは見えない裏方である映画技術者のプライドと映画への熱い想いとによって支えられて成り立っていたのだ。

さらに、映画館の将来と今後の課題についてもいろいろ話をして下さった。今後の公共ホールでの上映についての設備更新についての大切さについても多々考えさせられ、質問や意見が次々と飛び出して熱気がいっぱいの講演であった。(報告・齋藤讓一)

 

◎講義内容一覧(文責・羽田野晉嗣)

・ 映画館の歴史

映画誕生より今年で116年。

日本国内においての最高入場者数は1958年の1,127,452,000人。最低入場者数は1996年の119,575,000人。

映画館数の最高建設件数は1960年の7,457館最低建設件数は1993年の1,734館。

 

・ ビデオ教材35m/m標準映写機の取扱い

  1.電源の確認

  2.プリント(フィルム)の点検と整備

  3.映写機の点検と清掃

  4.映写前の総合テスト

  5.プリントのセットとスタンバイ

  6.開映と終映

 

・ 基礎知識

 スクリーンサイズの違い

  スタンダード(縦横比1:1.37)

  ヨーロピアンビスタ(縦横比1:1.66)

  アメリカンビスタ(縦横比1:1.85)

  シネマスコープ(縦横比1:2.35)

ドルビーサウンドシステム

  ドルビーA,SR(4ch)

  ドルビーデジタル(5.1ch)

  ドルビーデジタルサラウンドEX(6.1ch)

  ドルビーサラウンド7.1(7.1ch)

 

・ シネコン(シネマコンプレックス)について

現在主流の映画館(80.2%)である。

1つの映写室で複数の映写機を使用し少人数の技術者で対応可能にしている。

ノンリワインド映写機を使用してある程度の自動化がなされている。(フィルムの掛け替え作業が必要ない)

 

・ DLPシステム(Digital Lighting Processor)

光源とDMD(デジタルミラーデバイス)の間に高速で回転するカラーホイールを配置し、赤・緑・青の光を時分割でDMDに当てる方法である。

フィルムを用いずサーバーにある映画データをキー照合で管理を使い上映する。 

 

・ 3Dシステム

日本には現在3種類の3Dシステムがある。

左右に赤と青のカラーフィルタの付いた眼鏡で見る方式。

左右の映像に直交する直線偏光をかけて重ねて投影し、これを偏光フィルタの付いた眼鏡により分離する方式。(明るさを必要とするため輝度の高いシルバースクリーンが必要)

左右異なる角度から撮影した映像を交互に再生し、左右の視界が交互に遮蔽される液晶シャッターを備えた眼鏡で見る方式(通常のスクリーンでも上映可能)。

 

・ 公共ホールの設備更新について

常設設備としてDLPシステム・3Dシステムを公共ホールに設置するのは現状では難しい。単発のイベントとして仮説で設営する程度。

版権の問題が大きいので主催者、映画会社との協議が必要。

 

■裏方教養講座「日本で演じられてきた演劇たち」の報告

2011年7月29日(金)14時40分から16時45分まで、大阪・貝塚市のコスモスシアターで開催されました。

講師は、本連盟副理事長の八板賢二郎。

1200年前に成立した雅楽からミュージカルまで、現存する演劇と滅亡した演劇について、1200年の経緯を2時間で解説しました。

財団法人貝塚市文化振興事業団と一般社団法人日本音響家協会西日本支部の共催。

■第1種劇場技術者検定/第3種劇場技術者検定 大阪実施報告

2011年7月28日~29日、大阪・貝塚市のコスモスシアターで実施しました。

講師は、「舞台照明の仕事」を海道裕之氏、「舞台進行の仕事」を児島章一氏、「舞台音響の仕事」を前川幸豊氏でした。また、講座プログラム総合進行を長曽誠氏が担当しました。

なお、筆記試験の結果、全員が好成績で合格しました。

財団法人貝塚市文化振興事業団の共催。

■製作現場を見に行こう「衣裳編」

2011年6月13日、衣裳デザイナーとして幅広く活躍されている宮本宣子さんの制作現場「宮本宣子ワークショップ」を見学しました。

宮本宣子さんは、開催のお知らせでもお伝えしたとおり蜷川幸夫や井上ひさし作品などの演劇はもとより映画テレビドラマまで多岐にわたる分野の衣裳のデザインと製作をされています。

 

衣裳デザインの仕事について端的に述べると以下のようになります。

台本を読む→登場人物の衣裳を時代考証し、イメージする→イメージをデザイン画にする→型紙を作る→役者の体型を模したトルソウ(立体モデル)に、布(シーチング)で、型(トワル)を作る→生地を揃える→実際の生地で型を作っていく→役者に合せ、仮縫いする→出来上がった衣裳で、ドレスリハーサルをする→本番。

 

以上の過程を1ヶ月ほどの間に演出家との打合せを交えながら行うそうです。思いの外、短期間で仕上げなければならない上に、演出家によっては、打合せ後に変更を要求されたり、役者の採寸が舞台稽古の10日ほど前だったりと苦労することが多多あるそうです。

また、古い質感を出すことが結構難しく、布地を洗濯する、ヤスリでこする、カナダワシでこする、綿をつける、染めるなどとさまざまな工夫をされて仕上げています。

とにかく、未公開製作中の作品を前に、宮本先生とスタッフの山下さんのお話を生で聞けたことで、衣裳デザインとはどんなものなのかが、肌で分かる実に有益な見学会でした。

今回の現場で感じたことは、舞台の現場において舞台、照明、音響が常に議論の中心にありますが、衣裳デザインは劇場技術において、実はもっと語られるべき価値を持っているのではないかということです。すなわち、舞台において最も重要な役者が身につけるものが衣裳であり、それによって、役者の演技や作品の出来映えに影響を大きく与えているからです。

見学の後は、日暮里駅からほど近い谷中銀座を散策しました。

まずは、谷中銀座の入り口にあるユニークな名前の階段坂「夕焼けだんだん」へ。ここからすぐ下に谷中銀座の商店街が広がり、その先には、マンション群が望めます。確かに、夕焼け時には非常に気持ちのいい眺めでありましょう。

谷中銀座商店街は、二間ほどの小さな通りの両端に、魚屋、肉屋、お惣菜屋やお菓子屋などのさまざまなお店が軒を連ねており、多くの買い物客でにぎわっていました。まさに、下町の商店街という雰囲気で、食べ歩きをしたくなりました。

散策後、その一角にある地鶏料理屋で交流会を行いました。鶏の串焼きはもちろん、刺身やまだ産卵される前の卵を調理したものなど、珍しい料理も味わえました。当然、味の方も抜群でした。おいしい料理とお酒を味わいながら、お世話になった宮本先生と山下さんも交え、ワークショップとは違った話で、楽しいひとときを過ごしました。(報告・平野克明)

 

◎感想文

 宮本宣子ワークショップと谷中銀座散策

 石井 幸

宮本宣子先生のアトリエ見学をさせていただき、これまで抱いていたイメージとは違っていたので驚きがありまた。そして、製作現場を実際に拝見させていただけてとても感動し、勉強になりました。

私のイメージしていた衣装製作現場はアパレル工場のようなイメージでしたが、アトリエが思ったより小さく、作業をしているスタッフも少人数でした。

アトリエで先生方が描かれた衣装デッサンを見せていただいたとき、一枚の衣装デッサンができあがるまでに、平均して50枚ものデッサンを描かれていると聞いて、とても根気がいるお仕事だなと実感しました。

また、製作された衣装を実際に拝見せていただけて、とても感動しました。

そしてアトリエ見学の後の谷中散策は、とても楽しむことができました。

日暮里には衣裳製作用の布の買出しなどでたびたび訪れていたのですが、谷中商店街の方には行ったことがなかったので、新しい日暮里を見つけたようでとても嬉しかったです。

また、谷中散策の後の飲み会(交流会)にも参加させていただき、色々な方とお話ができ、とても楽しく勉強になりました。

宮本先生、山下先生、八板先生には、人のつながりの大事さなどお話いただいてとても共感し、私も先生方のようになりたいと強く感じました。

今回の催しに参加できたことをとても嬉しくありがたいと思い、また、このような機会をくださった斎藤先生(千葉商科大学講師/連盟理事長)には感謝の気持ちでいっぱいです。

私もこれからは、もっと勉強し衣装のお仕事に携われるよう頑張りたいと思っています。ありがとうございました。(千葉商科大学生)

 

■シンポジウムの報告

「この時だから考えよう、劇場の危機管理と省エネ設備」と題したシンポジウムを、2011年5月16日(月)、新宿文化センター和会議室で開催しました。

主に、東日本大震災で問題となっている危機管理や、震災後の芸能やイベントの自粛過剰などについて討議をしました。

また、これからは安全な劇場を設計しよう、節電等を考慮した劇場への改修をしようと、さまざまな角度から次世代劇場の在り方を話しあいました。

安全な劇場を作ろうという意見に 対しては、劇場は危険なところと観客にも認識させろという意見もでるなど、立場によっては考え方が違うものと痛感しました。

大劇場や体育館では、観客席天井に化粧板を吊っているところが多く、地震による天井板落下事故が各地であり、その報告がシンポジウムに参加した連盟会員からもありました。

このことは、翌日(5月16日)のNHKのニュースでもとりあげていました。

地震時の観客の誘導については、場外避難と場内待機とに意見が分かれましたが、これは劇場の構造(設計)で異なってきますので、劇場従事者は自分たちの劇場の状況について熟知していなければならないでしょう。つまり、劇場従事者の判断が重要になのです。

それは、劇場技術者には舞台上の安全だけでなく、観客を守る力も求められています。

そして、節電と危機管理は、劇場運営の必須項目となりました。

2時間足らずのシンポジウムでしたが、宮城県や茨城県からの参加者の生々しい報告を聞くことができ、また参加者全員が意見を述べ、各自が劇場の仕事に従事する者として重大な役目を果たさなければならないと心に刻んでいただけたことと思います。

シンポジウム終了後は交流会を催し、有意義なときを過ごしました。

◎参加者のご感想

シンポジウムに参加させていただき、ありがとうございました。

多くの問題提起、提言がされた中で、安全マニュアルについての討議が私には一番考えさせられました。

地震当日の桶川市民ホールの状況もお聞きしましたが、そこでは、マニュアルにしばられた杓子定規な対応だけでなく、経験のある劇場技術者として、時には機転を効かせた対応が求められている、ということのようです。

私一人でできることは少ないかもしれませんが、皆さんと協力しながら、これからの劇場運営、舞台運営を考えていきたいと思います。(埼玉県・奈良 暁)

 

■劇場技術者検定講座、桶川開催報告

2011年3月10日~11日、桶川市民ホールにて、財団法人けやき文化財団の共催、日本音響家協会の後援で開催されました。

桶川市民ホール(埼玉県)で開催された検定講座は、途中まで順調に進んでおりましたが、最後の仕上げとなる演習の4回目のときに地震が発生したため、全員、楽屋に避難しました。

揺れが収まった段階で劇場外に集合し、受講者と連盟スタッフの員数を確認しました。

この後も余震が続き、停電した舞台を覗くと、吊ってある音響反射板が不気味に大きく横揺れしていましたので立ち入り禁止とし、余震の収まった17時頃、観客席に置き忘れた受講者の荷物を回収して検定講座の終了を宣言しました。

この時点で、電車は停まっていましたので、近隣の受講者だけ帰宅し、遠方の受講者は帰宅を断念して楽屋を避難所にしました。

そこで、近くのスーパーやコンビニへ食料と携帯電話充電器具などの調達に走る者、劇場内で水道水の確保をする者などと、慌ただしく動きました。既に停電しているのでセンサーで動く水道の蛇口は作動せず、手動蛇口を探して給水しました。

また、商用電源が復帰したときに、舞台の照明器具が点灯して火災にならないように、主管電源を切るようにアドバイスして、その対策をしました。

18時頃、劇場側から非常電源の発電機の燃料が20時で無くなるという連絡があり、立ち退くことにし、弁当などをみんなで分けあって腹拵えをしました。

近くのビジネスホテルを確保しようしましたが、すでに満室。昔ながらの古い武村旅館(由緒ある旅籠で文化庁有形文化財)を当たったところ空室があり、旅館のご配慮により素泊まりで3,000円(1,000円引き)にしていただき、受講者と連盟関係者13名が宿泊しました。

翌日(12日)は、それぞれの判断で帰路につき、バスと私鉄を乗り継いだりしながら帰宅しました。

 

◎受講者の感想

・本日、第1種劇場技術者認定証を手にして、改めて身の引き締まる思いで一杯です。

1日目の八板先生の講義から始まり、講師皆様の実習すべてにおいて目から鱗!、復習あり、感動あり、すべてが納得のプログラムでした。

十数年間、舞台業務に携わってきた私にとって、とても実りのある認定講習会でございました。

また、11日に起きた突然の東北地方太平洋沖地震による大惨事に、講師の皆様、桶川市民ホールスタッフ皆様、そして参加者各自の冷静な判断と危険回避対応は、とても素晴らしかったのではないでしょうか。

桶川市民ホールにいらしたお客様、及び、私たち認定講習会参加者に、一人の負傷者も見られなかったことも本当に幸いいたしました。

その後の、停電による交通網の混乱により、帰宅難民となってしまった十数名の中にいた私ですが、先生方の適切な誘導と対応、桶川市民ホールスタッフ皆様の温かいお心遣いにどれだけ励まされたことでしょう。

停電でコンビニ等も閉店、暗闇に包まれた桶川市民ホール、非常用照明のスポットライトを背に、少ない食糧をみんなで持ち寄り飢えを凌いだ楽屋、励まし合いながら過ごした数時間、とてもとても思い出深い一夜となり、生涯忘れられない貴重な思い出となりました。

翌日(12日)の13時ころに徐行運転ではありましたが、電車が復旧、埼玉県桶川市に別れを告げ帰宅の途に。電車を乗り継ぎながら18時過ぎ、無事に千葉県鴨川市に到着することができました。

私の勤務するホールは、震度4強とのことでしたが、幸いに大きな被害もなく、照明のネジ等の緩みが激しかったのと、音響照明調整室のダンパーが閉鎖する程度で事無き得ました。

この貴重な体験を無駄にすることなく、今後の舞台技術向上に益々の研鑽を重ね努力すると共に、お客様の安全管理に努めて参りたいと存じます。

最後になりましたが、講師の皆様、桶川市民ホールスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。(千葉県/鴨川市市民会館/尾形英一)

 

・大変勉強になり貴重な大変をさせて頂きましてありがとうございました。

特に、私はホテルの仕事が多く、舞台での吊りこみや舞台での演技は初体験で、とても勉強になりました。

また機会がありましたら是非参加させて頂きたいと思っておりますので、宜しくお願い致します。(神奈川県藤沢市)

 

・未曾有の災害の中での迅速な対応、お疲れ様でした。

いろいろとありがとうございました。何のご挨拶も出来ず失礼致しました。

その後、詳細がわからず心配しておりましたが、報告(ホームページ)を拝見いたしましたので、皆様の無事を知ることができて安堵いたしております。

私は、桶川駅が18時頃に閉鎖したので、桶川小学校の避難場所で一夜を過ごし、翌日昼過ぎに東京へ戻り、そのまま新幹線にて帰宅することが叶いました。

思いがけず避難訓練(!)まで出来て、貴重な体験として今後の業務に活かしていこうと思います。皆様のご健康をお祈り致しております。(石川県小松市)

 

・懇切丁寧な講義を受講させて頂き、誠にありがとうございました。

解散後、私は一緒に受講しておりました同地域の方と一緒に行動し、桶川駅からタクシーで大宮駅まで行き、それから徒歩で南浦和駅へ行って、近くの小学校の体育館で一泊しました。

翌日、電車が動き出してから、取手駅まで行き、兄弟の迎えの車で無事に地元に戻ることができました。

現在、私たちの会館の被害が大きいため、各部署と連絡を取り合っております。

このたびは大変にお世話になり、誠にありがとうございました。(茨木県日立市/多賀市民会館/長澤秀夫)

 

■劇場技術者検定講座、宮崎・長崎開催の報告

宮崎県と長崎県で実施した「舞台進行のための劇場技術者検定講座」は、受講者述べ71名を対象に実施され、無事に終了しました。

 

宮崎市民文化ホール(第1種・第3種とも)3月1日~3月2日

長崎公会堂(第1種・第3種とも)3月15日~3月16日

 

主催:一般社団法人日本音響家協会九州ブロック

主管:日本劇場技術者連盟

協賛:宮崎県音響照明舞台協同組合

後援:九州公立文化施設協議会

 

◎受講者の感想

・普段、何気なく行っていた作業ですが、あらためて基本を見直す良い機会になりました。

小さいホールの担当者向けの、とてもためになる研修だと思います。もし、次回があれば熊本で行っていただけないでしょうか。特に3種のほうは、地域の「ホールで何かしたい」という人に学んでもらう切っ掛けになりそうです。

 

・実務に則した有意義な講習が受講でき、また講師の熱意に感謝します。学んだことを、自らが楽しみながら、ボランティアやライブの現場で生かします。第2種を目指して頑張ります。

 

・通常業務では行わないことを体験できて良かった。舞台の歴史的な背景や安全防災面でのもっと詳細な研修会があると良いと思います。

 

・普段は照明をせずに音響がメインなので、大変勉強になりました。明日からまた現場で活動をしますが、この2日間で学んだことを無駄にしないようにしていきます。

 

・普段、音響の業務しかついておらず、照明、舞台のことを基本から学べてとても良かったです。また、音響も知らなかったことや間違って覚えていたこともあり、とにかく2日間は今後に大きく役立つ内容で満足しています。

 

・どの分野においても、いろいろと再確認できたので良かったです。

特に照明においては、実際にTopのみ、SSのみ、Frontのみ、CLのみ等の明かりを見たことがなかったので、それぞれの役割を体感できて良かったです。

また、実習ではいろいろな人の個性がでていて、自分が今後、音響、照明、舞台をする時は各所に気をつけなければならないことを知ることができました。

 

・すごくためになりました。受講して良かったです。舞台の経験は浅いのですが、わかりやすかったです。

 

・10年、舞台の仕事をやっていますが、このように他の会館の方の進行などを見る機会がなかったので「人の振り見て我が振り直せ」で、自分の今後に生かしていきたいと思います。

また、このような機会を作っていただけたらと思います。

 

■裏方の教養講座(演劇編)の報告

一般社団法人日本音響家協会と共同で主催した「日本で演じられてきた演劇たち~創造する劇場技術者のために」は、11月29日(月)、東京・新宿文化センター第2会議室で開催されました。

伝統芸能の雅楽・能楽・文楽・歌舞伎・オペラを八板賢二郎氏が、新派・新国劇・新劇・アングラ演劇・小劇場演劇・ミュージカルを齋藤讓一氏が、経験談を交えて、分かりやすく解説しました。

北陸、関西、東北から、また照明、美術、俳優といった広範な受講者となりましたので、交流会ではいつもの音響機器の話題は無く、劇場法や指定管理者、今後の劇場運営、後進の指導などが話題となって、いつもと違う雰囲気の実りある会となりました。

 

■劇場技術者検定講座・宮城県開催の報告

2010年9月2日~9月3日の2日間、宮城県加美郡加美町にある中新田バッハホールで開催しました

中新田バッハホールとの共同主催、加美町教育委員会の共催、社団法人日本照明家協会東北支部・一般社団法人日本音響家協会・東北地区公立文化施設連絡協議会・宮城県公立文化施設協議会の後援で実施。

修了後の試験の結果、11名の第一種劇場技術者、12名の第三種劇場技術者が誕生しました。

なお、今回の開催は、本連盟会員中新田バッハホール所属で本連盟会員の小松正俊さんのご尽力によるものです。

 

講座修了後、バッハホール館長・清水忠行氏によるパイプオルガンの特別講義があり、受講者は実際に演奏もさせていただいたりして、二日間のハードな講座の疲れを癒すことができました。

 

なお、館長はバイブオルガンの調律の資格も有しているとのことで、短時間ではありましたが、とても分かりやすい解説で、バイプオルガンの構造がよく理解でき、この楽器に魅力を覚えました。

 

◎第一種受講者の感想

・舞台業務を担当するようになり5年6ヶ月がたちますが、初めて耳にする言葉もありました。危険と隣り合わせの業務であることを身にしみて感じました。喜んでいただけるステージをつくっていくためにも、今回の劇場技術検定で学んだことを再認識し今後にいかしたいと思います。ありがとうございました。

 

・2007年10月より、文化ホールに人事異動になりました。それまでは、税務行政、財政担当等の固い事務を行っておりました。1998年4月宮城国体(2001年開催)から、スポーツ振興に配属になり全国を飛び廻っておりました。そんな小生がどうして芸術文化行政にとその当時は思いましたが、住民や観客を楽しませ感動させたい、幸せにしたいと今は思っています。今回受講にあたり、さらによりよい文化ホールにしたいと考えております。

 

・舞台進行・照明・音響それぞれ実践的な勉強ができ、たいへん有意義だった。先生方の限られた時間での的確な指導は、とても楽しく頭に入りました。どの分野も、互いに声を掛け合ってコミュニケーションをとるのが大切だなと感じました。2日間ありがとうございました。

 

・普段の業務よりも疲れました。

 

・音響・照明・舞台をある程度理解してそれぞれの業務をこなすということは、それぞれのミスも減るし一つの作品をみんなで作ろうという『やる気』にもつながると思う。人件費の関係でもっと人数が減るので大変だと思っていたところで、もうそこまで意識した内容(講義)だったので、たいへん参考になった。自分自身ではある程度実行していたが、他の人に対しては強く指導できなかったので、これからは今回の講義の内容を伝えようと思う。

 

・2日間とても楽しかったです。色々なことを教わるほど舞台って奥深いと思い、ますます興味がわいてきました。演習では、みんなで一つのものを作り上げることの楽しさと達成感をリアルに実感できてとても貴重な体験ができました。ありがとうございました。

 

・お世話様でした。二日間、よい会でした。

 

・通常の業務ではなかなか経験できない内容があったので緊張感を持って臨みました。照明の実技では(特に3バトン)何の演出を意図した明かりなのか、電源に関する基本事項を、もう少し解説していただきたかったです。細かい作業の手順にどんな意味があるのか、どんなミスや事故を防ぐためなのか、大変参考になりました。ありがとうございました。

 

・教えて頂く先生の話し方が解り易く丁寧だった。本を読んでもイマイチ理解できなかったロープワークなども、見ながらやることにより覚えることができた。忘れないように、今後も思い出す機会を作りながら自分のものにしていきたい。舞台ワークの平台への毛氈(もうせん)の敷き方や所作代の知識なども、本に書いてあっても覚える機会のない内容が多く、とても参考になった。そして何よりも夜の飲み会(ワンコイン交流会)がとても楽しく、普段では聞けない話や沢山の同じ仕事をしている方々と知り合い、話をする機会ができたことが嬉しかったです。

 

・今回、第1種劇場技術者検定を受講し、今までなんとなくやってきたことをしっかりと理解することができました。私が勤務する施設は南三陸町より指定管理を2009年度より受け、引き継ぎとして町職員の方から文化ホールの操作など様々なことを習い、日常、特に困っていませんでしたが、今回学んだことを活かしより良い物を、使う方へ提供したいと思います。私の実際の仕事は、スポーツのインストラクターですが、南三陸町で文化ホールを運営するにあたり、これからも色々なことを学んで文化事業を行い、南三陸を盛り上げられるようにしていきます。今回は色々ご指導いただきありがとうございました。また、このような機会があることを希望いたします。

 

・ たいへん勉強になりました。もっと色々な講習を望みます。

 

・この度は、受講させていただき本当にありがとうございました。私は、ホール担当者として教わる方もなくいろいろと分からないことが多くありましたが、この二日間で、基本と大事なポイントを学べました。講義の最初にマルチタスクという言葉がありましたが、ホールの舞台運営では何でもやれるようにならなければと思いました。私共のホールも指定管理者に移り変わりつつあります。この機会に、この検定講座を受講させていただき、ありがとうございました。この検定に合格できたら、この資格は私にとって生き残っていく宝になります。いろいろとお世話になりました。

 

◎第三種受講者の感想

・講師陣の指導が良く理解が深めた。総合演習でピンスポを担当したが、他の部門も体験したかった。総合演習の内容をもう少し複雑な構成でやってほしかった。

 

・舞台の裏方のすごく参考になる講習でした。是非、来年の開催をお願いいたします。

 

・劇場技術者検定を受けて舞台進行のイロハを学び、これからの活動などに参考となったと思います。特に照明の仕込みはかなり大変だと感じました。

 

・何らかの機会にステージに立つことがあるのですが、今回の講習に参加させていただいて、音響・照明・進行の基本をあらためて学ばせていただきました。とても新鮮でした。各スタッフの協力と観客が一体になり、感動が生まれる…。今の時代だからこそ大切だと思います。今後共、よろしくお願いします。

 

・劇場というものが、安全性の点から見ると大変危険な場所であると認識できました。

また、その危険を避けるための掛け声や確認の声掛けは、作業をスムーズに進めるもので、私たち一般の仕事でいう「コミュニケーション」と同じであると思いました。また、照明や音響というものが、奥深いものであることも強く感じました。二日間たいへんありがとうございました。

 

・今までは劇などを客の立場で見ていましたが、今回の検定に参加し一つの劇などを完成させるためには、劇場スタッフの協力があってこそだと思いました。また劇を見学する際は別の角度から見られると思います。最後に劇に関するすべてに「美」を感じました。

ぜひ、またこのような検定などが行われるなら参加し、今回よりワンステップ上の勉強をしたいと思います。

 

・劇場技術の奥の深さに講師先生のお陰をもちまして、たいへん勉強になり、私にとってこれがさわりかと思って、これからが勉強だと思っております。音響関係について興味があり特に勉強していきたいと思っております。今後共よろしくお導き下さいますようお願い申し上げます。

 

・二日間、たいへんお世話様でした。講師の先生方の分かりやすい説明で、初心者の私でも理解することができました。総合演習では皆さんの気持ちを一つにして終えたときには「達成感」を味わうことができ、とてもすばらしい経験をさせていただきました。これから、ホールの事務だけでなく舞台のお手伝いもできるよう、また少しずつ勉強していこうと思います。ありがとうございました。

 

・大変良かったです。教本の中に忘れていたこともあり、思い出した部分もありました。

 

・米空軍のジャズバンドが加美町に来たのを見たのが受講のきっかけです。普段、テレビ等で何気なく舞台やステージの様子を見ているわけですが、普段は見えない影の部分でのスタッフの頑張りが作品を支えていることを改めて実感させられました。私自身、映画のメイキング等の裏話が好きなこともあり、非常に楽しく受講させていただきました。また機会があれば関っていきたいと思います。

 

・ 座学だけでなく実際に機材に触れ、操作し、皆で協力して一の作品を作り上げる貴重な体験をさせていただきました。仕事とは直接関係ないのですが、趣味のバンド演奏やときどき頼まれる講習会のスタッフとして働くときに、今回学んだことを活かして、会館の方とよい作品作りに尽力したいと思います。また、将来、地元ホール管理をNPO法人等に任せられる機会があったら、参画したいと思います。最後に連盟とバッハホールの皆様のおかげで、二日間貴重なことを学べたことに感謝いたします。

 

■劇場技術者検定講座・大阪府開催の報告

2010年7月22日~23日、大阪府貝塚市のコスモスシアターで開催しました。

貝塚市文化振興事業団の共催、一般社団法人日本音響家協会・大阪府公立文化施設協議会・近畿地区公立文化施設協議会の後援。

 

◎第一種受講者の感想

・舞台運営に関する技術を再び基礎から学ぶことができて、非常にためになる二日間でした。

 

・全体的に解りやすく、有意義な時間でした。常に基本を忘れず、この二日間で学習したことを持ち帰り、今後の業務に活かしていきたいと思います。

 

・本当に楽しく受講させていただきました。受付時から、ホールの方の対応もとても親切で感激しました。この機会をいただいたことにたいへん感謝いたしております。また、私たち受講生のための準備、ばらしをしていたスタッフの皆様も本当にありがとうございました。この出会いを大切にしたいと考えております。

 

・各部門の専門家による講義は的を射たものも多く、これからの仕事に有意義でした。強いて申すならば実技の時間にもう少し割り当てがあると良かったかも。この検定だけではないのですが、すべての舞台芸術関連の検定や資格が有効なものに成長していただければと思います。

 

・日頃から行っている仕事ではあるが、初心に返るつもりで受講させていただきました。法規など詳しく知らないことも多く、そのことが職場の安全や観客の安心に直結していると痛感しました。今後、ホールに戻ったときに、他のスタッフと意識を共有していければ良いと思います。短い時間でしたが大変有意義に過ごすことができました。

 

・ホールの音響担当として舞台で仕事をしていますが、舞台や照明などは体験したことがなく仕込みから本番、ばらしまでやって、大変勉強になりました。また、このような機会がありましたら参加したいです。

 

・この仕事をさせていただいて、ある程度のキャリアになると、知っていて当たり前なことをしっかり理解していないことがあります。今回の受講で、それを確認できたことがたくさんありました。

・とても楽しく勉強になりました。ありがとうございました。

 

◎第三種受講者の感想

・興味があると言うことだけで、ほとんど何も知らない身で受講致しました。学ぶことだらけの二日間でした。家でもう一度教本を読もうと思います。今回を機に、許されることならもっと勉強し、いつかは舞台創りのお手伝いができればと思っております。

 

・大変充実した内容で勉強になりました。ありがとうございました。自主事業ではクラシックコンサートの立会いが多く、音響卓や照明卓、ライト等、ほとんど間近で見ることがなかったので興味深かったです。教本は読み返し、忘れないようにしていきたいと思います。

 

・プロの方々と混じって劇場のことを広く易しく基本的なことから学べて良かったです。これらのことは劇場の外に出ても応用の利く素晴らしいことだと思いました。特に安全確認においての徹底した声掛けなど、大変ためになりました。

 

・たいへん楽しく、充実した二日間でした。一週間ぐらいかけてやってもよかったのでは?と思うほどでした。今後の自分の活動に生かせたらと思います。ありがとうございました。

 

■日本劇場技術者連盟勉強会の報告

2010年7月12日(月)、ルノアール四谷店・マイスペース3Aにおいて、「劇場技術者のエコ挑戦・これからの省電力と舞台照明を考える」をお二人の講師をお招きして開催した。

 

1、商用電源についての基礎知識 講師:伊代野 正喜氏

(元ヤマハサウンドテック/ザ・ゴールドエンジン相談役)

2、LED舞台照明の進化 講師:市ケ谷 昌典氏

(舞台照明家/株式会社リクランド代表)

 

「商用電源についての基礎知識」は、電源のオーソリティー・伊代野さんの長年の経験に基づいた内容で、あらためて電源の基礎知識の大切さを学べた。

舞台照明家・市ケ谷さんによる「LED舞台照明の進化」は、広範な仕事に従事してきた照明家からみた内容となっていて、LEDのさまざまな利点と欠点が理解できて、今後の活用の参考になった。また、LEDを使用したときの電気料金についての比較も示されたので、省電力と経費削減が明らかになった。

今回の勉強会は、照明・音響・舞台進行が連携して同一テーマで学ぶという画期的な内容なだけに、この場だけに留めるには惜しいという意見もあった。

 

◎受講感想

今回の勉強会はこれからの省電力と舞台照明がテーマで、最初のテーマ商用電源の基礎知識を伊代野正善氏に講義していただいた。

誰もが必ず使う電源について基本的なことから分かり易く説明頂き、瞬低や停電(私はこの勉強会まで瞬低のことを「瞬停」だと思ってました)高電圧駆動の音響機器は色々な利点があるので、今後推進していけば良いなと感じた。

次に、LED舞台照明の進化について市ケ谷昌典氏に講義していただいた。

社会的にも舞台照明業界的にも今後主流となってゆくLEDについて、歴史から利点・欠点に至るまで実データを交えながらの、非常に分かり易い説明だった

まだまだ発展中の技術のため現在すぐに手は出せない所だが、5年後・10年後には実用に叶う製品が現われると思う。

最後に、どちらの講義にも言えたことだが、省電力を進めるのは最終的には技術者1人1人の意識レベルを上げて行くことに尽きる(こまめに消す・機材の接触部分を奇麗にし電気的効率低下を防ぐ等々)のではないかと思う。(羽田野晉嗣)

 

■2010年定時総会

定時総会は、2010年4月19日(月)15:35分~16:55、埼玉会館5D会議室で開催され、つつがなく終了いたしました。散会後の交流会は、北海道から九州まで全国のさまざまなジャンルの裏方たちの集まりなので終始、前向きな話題で有意義な時を過ごしました。

 

■第一種劇場技術者検定講座・桶川の報告

2010年2月9日(火)~10日(水)の2日間、桶川市民ホールで開催され、講義内容も洗練され充実した講座となり、受講者の高評を得て無事終了しました。

演習
演習

9日の終了後に楽屋でワンコイン交流会(500円)が開催され、実りある交流が行われました。

◎受講者の感想

・普段は担当しない部署の舞台進行をやらせていただいたことが楽しくもあり、勉強にもなりました。互いの業務内容を知ることが、スムーズな運営、利用者へのサービスにつながると改めて感じました。

 

・普段なにげなく行っていたことを改めて基礎から体験できた二日間だした。二日間で学んだことをこれからの仕事に活かせて行きたいと思います。ありがとうございました。

 

・基本的な舞台作業から現実的に実際に起こりうる問題についての解決方法まで、経験を豊かな講師の生の声がとても参考になりました。各地でさまざまな問題があるという意見の交換の場としても、とてもよい場だと思いました。

 

・二日間ありがとうございました。照明の仕事を始めて3年になりますが、利用者と打ち合わせをしているとき徐々に専門家の目線で接しているなあ、ということに今回の講義を聞いて思いました。また視野が狭くなっていることにも気づきました。このセミナーで安全管理で知っておいたほうがいいこと、やるべきことなどが以前よりも理解できました。ありがとうございました。

 

・普段の専門分野のことだけでなくいろいろな体験ができ、勉強になりました。また、自分の専門分野のことも改めて基本を思い出し、一つ一つ確認して作業することが安全への最善の道なのだと教えていただきました。これからの仕事に、今回学んだことを生かしていこうと思います。ありがとうございました。

 

・総合演習は、単純な演目だが効率良く予算をかけずに全員に楽しくやらせているのを体験しました。自分のホールでも取り入れたいと思います。市民に「舞台で使用しているプロの機器は凄いんだよ」と言って、難しい機材の使用法ばかり教えてきましたが、本来は、このセミナーのような方法で教えなければならないと思いました。

 

・初日の休憩時間が少ないように感じました。

 

・日頃の担当分野ではない音響を分かりやすく教えていただき、たいへんためになりました。これを機に、違う分野についても多少なりとも身に付けておこう思いました。今回はありがとうございました。

 

・基本を学び直す機会として、とても役に立ちました。職場に戻り再度見直ししなければならないと考えさせられました。

 

・ありがとうございました。とても勉強になりました。プロの方々のこだわりが感じられました。いろいろと体験できました。歳のせいかすぐに忘れてしまうとおもうので、そのときは若い職員と一緒に受講したいと思います。

 

・とても充実した研修で有意義でした。これからも「お客様の目線」で仕事をしていきたいと思います。舞台の仕事をレストランや料理にたとえての講義はとても分かりやすかったです。また他の会館を見ることはとても新鮮で勉強になりました。

 

■日本舞踊の舞台技術研究会の実施報告

表記の事業は2009年12月9日(水)、財団法人けやき文化財団の共催により桶川市民ホールで開催され、遠方からの受講者もあり、総勢50名のワークショップとなりました。

講師はこの道30年以上のベテラン揃いで、講義は身近な問題に触れていたためか、受講者からの質問がとても多く、充実したワークショップとなりました。

最後に花柳由女師のご協力で「長唄・宝船」と「大和楽・夢」を上演して、研修を締めくくりました。

 

■ボーカルマイクセレクション東京の報告

日本音響家協会東日本支部と共同で開催したボーカルマイクセレクション東京は、2009年11月25日(水)、新宿文化センター展示室で開催され、日本中の優れたボーカルマイクが勢ぞろいした。

京都放送の深尾康史さんの「マイクロホンの変遷」と題した昔々のマイクついての講義、TOAの阿部匡孝さんによる「デジタルワイヤレスマイクの規格」と題した講義なども行われ、ボーカルマイクの重要性を再認識するとともに、目覚ましい進歩を見ることができた。

協賛は、株式会社イーブイアイオーディオジャパン、オタリテック株式会社、株式会社オーディオテクニカ、株式会社エレクトリ、ゼネラル通商株式会社、ゼンハイザージャパン株式会社、株式会社タムラ製作所、ティアック株式会社、TOA株式会社、ヒビノ株式会社、松田通商株式会社。ローランド株式会社の機材提供。

終了後に打ち上げ交流会を実施しましたが、そのときの会費の残額3,000円は「子どもワクチン募金」に献金させていただきました。

 

■お知らせ

2009年10月26日開催の「めざせ創造する劇場技術者」の交流会「呑みニュケーション」の会費の残金を、「子どもワクチン募金」に献金しました。ご参加の皆さん、ご協力ありがとうございました。

 

■めざせ、創造する劇場技術者の報告

2009年10月26日(月)14時~17時、新宿文化センター第二会議室で開催しました。

舞台で働く者として安全管理は当たり前の技能。プロの地位は創造力で獲得しよう!をテーマに開催されたフォーラム。台風が接近して雨足が激しい中、熱心な会員が集まってくれました。

それぞれが事なの立場の劇場技術者が、忌憚のない意見交換しました。呑みにケーションでは寄り一層、打ち解けた交流ができ、日本劇場技術者連盟の趣旨が実りました。

このような小さな集まりが、いずれ力強い大きな団体に成長していくのです。

第1部「地位確立って、創造って」

   講 師 八板賢二郎(日本芸術文化振興会)

   ゲスト 小松裕一郎さん(イベントクリエイタ)

   ~皆既日食クルーズ計画を成功に導いた創造力~

第2部「めざせ、創造する劇場技術者」

   講 師 斎藤譲一(元埼玉会館館長/本連盟理事)

 

■映画「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」の研究会

2009年8月31日、台風直撃という悪天候の中、参加していただいた熱心な会員の皆様と共に、ローリングストーンズの映画を鑑賞しました。このイベントは、ストーンズの仕事ぶりを見て、創造する劇場技術者として何かを汲み取ろうという趣旨で開催しました。

参加者からは、次のような感想が寄せられましたのでご紹介します。

『超一流のエンターテインメントは、すごいの一言ですね。無条件にすごい、圧倒的なパワーを感じます。さらに、それを表現する映像の作り方もすばらしい!!迫力があります。オープニングからいきなりトップギアに引き込まれました。また、ラストのアップから超ロングの空撮のような広大な空間画面も圧巻でした』

『後半のインタビュー場面で、インタビュアーがミックに「ギャラ以上の仕事をやっているね」と言っていましたが、前半を見ていて私もそう感じていました。そのように見せることがエンターティナーの仕事でありますし、それで、観客は入場料以上のものを見たと喜んでくれるんだと思いました。これが今回の催しのキーポイントではしょうか』

『辞書には「エンターテインメント=人を楽しませるもの」とあった。それを教えてくれる映画鑑賞会でした』

一般社団法人日本音響家協会・東日本支部の共催、松田通商株式会社の協賛で開催いたしましたが、特に松田通商株式会社の網野さんの会場設営に感謝申し上げます。

同日に、大分県のパトリア日田でも開催しました。参加者はそれぞれに感動を受けたようであります。

 

■劇場技術者技能検定/大阪開催の報告

標記の講座は、2009年7月27日~28日、貝塚市文化振興事業団の共催、一般社団法人日本音響家協会後援のもと、大阪の貝塚市民文化会館・コスモスシアターで開催され、受講者から好評を得て終了しました。

第一種を14名、第三種を5名が受講し、修了後に実施した筆記試験で審査されて全員が合格しました。

講師とスタッフは以下のとおり。

 照明 皿袋誠路(株式会社ピーシーウエスト)

 音響 前川幸豊、浅原雄治(日本音響家協会)

 舞台 小澤健二(株式会社ピーシーウエスト)

 座学・コーディネート 山形裕久(財団法人貝塚市文化振興事業団)

 アシスタント 長曽 誠(財団法人貝塚市文化振興事業団)

 広報・記録 堀 祥代(財団法人貝塚市文化振興事業団)

受講者の感想文を読むと、この講座の実施意図が高く評価されているようです。

 

◎第三種受講者の感想

・これまで、いろいろなセミナーを受講してきましたが、このセミナーは実技の割合が多く、充実感がありました。市民劇団は、それぞれ得意分野を役割分担して、安価に活動すればよいと思っていたが、今回、音響と照明の技術支援を受けたら、一味も二味も違う演劇になるなぁと実感した。関係者にこのセミナーを広めたい。

 

・すごくよい体験ができ感謝しています。照明さん、音響さん、道具さんたちの苦労も知ることができました。舞台監督の体験も勉強になりました。みんなの力が一つにならなければならないなと、あらためて強く感じました。

 

・来年3月に子供たちがお世話になるホールの裏方を見てみたいという好奇心でのみで参加しました。一つの舞台を成功させるために色々な方の知恵と技術が必要だということを実感できました。この時期に、このような講習に参加でき、たいへん良かったと思います。また、コスモスシアターが、こんなに設備の良いホールとは知りませんでした。

 

・プロの一種とアマの三種で同じ講習を受けさせ、基準の違う筆記試験を実施して、別々に認定するアイディアは秀逸だと思います。舞台芸術創造への市民参加に寄与する画期的な試みではないでしょか。この事業を推進して、法整備につなげていってほしいです。

 

◎第一種受講者の感想

・このような講習会は、とても貴重だと思います。照明に関しては初心に戻って聞くことがで、舞台、音響については日頃、学ぶ機会もなかったので新鮮でした。

 

・とても勉強になりました。基礎を学ぶことができ本当によかったです。普段では分からない別セクションの知識を学べ、たくさん驚いたり納得したりもしました。今後の仕事に生かすことができます。楽しかったです! ありがとうございます。

 

・普段の業務で意外と見落としていることが多くあり、再認識させられました。また、いろいろな方と知りあえて、これからの仕事に活かせるお話をたくさん伺えたので、財産になりました。この検定がどんどん普及して輪が広がっていくその中の一人になれれば嬉しいです。本当に成長できた二日間。貴重な時間をありがとうございました。

 

・普段は照明の仕事をしているので、この機会に音響の世界に触れることができて、とても勉強になりました。

 

・舞台操作の仕事を主にしているので、照明や音響の専門的知識を身に付けることができてよかったです。これからは他の部署を見る目も変わってくると思います。

 

・普段は触れることができない調光卓などにも触れて楽しかったし勉強にもなりました。ありがとうございました。

 

・初日は凄く構えて来てしまいましたが、楽しかったです。照明が専門なので、照明を知らない方々に照明を知ってもらえて凄く嬉しく感じました。音響については全く知らなかったのですが、分かりやすく説明していただいたので、ほんの少し理解できてよかったです。

 

・日頃、会館の打ち合わせの際に、照明や音響のことを尋ねられて困っていましたが、これで自信を持って答えられるようになり安心しました。

 

■2009年総会開催

2009年4月27日(月)15時30分~16時30分、東京・国立能楽堂内「レストラン向日葵」で開催しました。まだ会員は少ないのですが、2008年度は実りあるイベントを開催できました。そして、若い組織だけあって、熱気が感じられる総会であった。

交流会は代々木の居酒屋「土風炉」で開催、3時間にわたり夢を語り合いました。

 

■宮崎県都城市の劇場技術者技能検定報告

2009年2月25日~26日都城市ウエルネス交流プラザ(ムジカホール)において、実施しました。

一種を40名、三種を5名が受講。

主催は有限責任中間法人日本音響家協会九州ブロック、日本劇場技術者連盟と宮崎県音響照明舞台事業協同組合の共催、都城まちづくり株式会社の協力で開催しました。

 

■桶川の劇場技術者技能検定報告

2009年2月3日~4日、埼玉県・桶川市民ホールにおいて、第1種劇場技術者検定講座と市民のための第3種劇場技術者検定講座が実施されました。

本連盟の実施趣旨は、市民と共に学ぶことであり、公共ホールの運営を円滑にするために市民とプロの技術者が同一方向を向いて進むことが大切であると考えるからです。

安全業務は、知識だけで叶うことではありません。基本的な技能と作法をしっかりと身につけて、先人の教えを正しく受け止めて、舞台全体の動きを把握して作業に取り掛かることです。

今回も全国から、志の高い方々が大勢参加されました。学習だけでなく、交流によって志気を高め、全国の劇場技術者が連帯できるようになるこが連盟の目標です。

そのために初日には、楽屋において500円会費のワンコインパーティーを開催しました。

本講座は、受講者に近い立場の現役の劇場技術者が講師を務めることで、身近な基本技能や実体験を丁寧に指導できる体制をとっております。

講義の形態は、前回の受講者のアンケートを基に、公演形式を採用し、照明の粗仕込みから本番までの工程で進行しました。

◎受講感想

2008年2月3日~4日、桶川市民ホールにて劇場技術者技能検定を受講しました。暦の上ではそろそろ春の始まり。とは言え、朝の肌寒さを感じつつ会場へ向かいました。

最初の2時間の座学は第1種と第3種で場所を分かれて受講し、その後の舞台上を使う実習は合同で行われました。

私は某劇団に入団して約10年、その後独立して19年程が経ち、現在は演劇音響に携わっておりますので、内容的には分かっていることも少なくありませんが、今回の講座の受講資格は「劇場・ホール等の実務経験1年程度」ということです。私も初心に返って受講しました。

そんな中でも、所作台の裏側を詳しく見るなど初めて知る事柄もありました。また私は、実務の中では劇場管理という仕事の経験がありませんので、「劇場の安全対策」などは劇場への外来スタッフとしても、もっと気を使わなければいけないことと感じましたし、「労働基準法」などは私も少なからず人を使う立場として、もっと認識しなければいけないと今更ながら反省いたしました。

案の定、2日目の最後に行われた筆記試験では、私はその辺りの問題が苦手だったようです。そして恥ずかしながら「篳篥(ひちりき)」は読めませんでした。が、これは受講者の8割くらいの方々が読めなかったのではないかと・・。教科書にはちゃんと記載してありましたので、出題のあっぱれと言うところでしょうか。

2日目の合同演習では、受講者が「舞台進行」「照明」「音響」の担当に分かれ、実際の公演さながらの演習をしました。私は照明班に配されました。久しぶりに触れる調光卓の感触は大変懐かしいのですが、何とも思うように操作ができず、音響調整卓のフェーダーとの操作感の違いや、舞台の流れに対する意識のもち方の違いを改めて感じました。

そしてこのような催しでのもう一つの楽しみ、初めて出会う方々との交流や、遠方からの方々との再会は何事にも変えがたい貴重な時間だと思います。他の受講者の方々も同じことを、お感じではないかと思います。

最後に、私ごときがこんな事を申し上げるのは大変おこがましく、失礼きわまりないことと存じますが、「劇場技術者技能検定講座」は今回が2回目の開催とのこともあり、部分的には成長段階であるようにも感じました。今後は内容が一層充実して、より良い講座になる事を期待いたします。そして、これまた僭越なことですが、私も陰ながらお力になれたらと思っております。

私の在籍している「日本音響家協会」でも、間もなく「音響家技能認定講座」を開催します。私自身、今回の受講の経験を生かし講義を行いたいと考えます。

講師の皆様、大変お疲れ様でした。【大野正美】

 

◎一種受講者の感想

・初めて聞くことなど沢山あり、とても勉強になりました。今回学んだことを仕事に活かしたいと思います。劇場に関わる人たちと交流ができて良かったです。

 

・毎日、何気なく行っている仕事ですが、このような研修に参加することによって、基本の大切さ改めて感じることができ、自分のためになりました。これからは、研修で学んだことを忘れずに、安全に楽しくお客様のために仕事をしていきたいと思います。

 

・とても楽しく勉強になった二日間でした。実演で照明を担当し、ピンスポットを操作できたのが良かったです。小屋付でないので、さまざまな劇場の方々とご一緒できて有意義でした。更なる向上を目指したいと思います。

 

・とても楽しく学ばせていただきました。技術的なことはもちろんですが、労基法や著作権などの法律的なことも学べたことは有意義でした。教本(教科書)は、基本的なところが分かりやすく掲載されていて、見やすくなっており、それを自分で深めなければならないと感じました。参加の皆さんと交流できたことがとても楽しかったです。

 

・このような機会により、他館との交流が広がり、またホールごとの技術向上につながれば大変良いことだと思います。

 

・分かっているつもりのことでも、基本から講義を受けると初心に戻れるので、このような機会は大変ありがたいです。当館の他のスタッフにも、是非、受講するように勧めたいと思います。

 

・長年、ホールの音響の仕事をしてきましたが、舞台・音響・照明の基本から教えていただき、あらためて学ぶことが多く、たいへん良い勉強になりました。今回学んだことを生かし、舞台の仲間と協力しながら仕事をしていきたいと思います。

 

・自分とは違う視点からの意見や質問が面白く、たいへん勉強になりました。他の部署の仕事が分かり、これからの仕事に活かしたいと思います。他の方が、どういうことをされるのが嫌いなのか、それはなぜか、ということをもっと知りたく思うようになりました。

 

・講師の方々が親切に教えてくださり、とても参考になりました。

 

◎三種受講者の感想

・楽しく学べた、が率直な感想です。普段、学校では学べない貴重な体験ができました。合同演習では、緞帳の上げ下ろしの担当をしましたが、スイッチを押すだけなのに、とても緊張しました。とてもよい刺激になりました。初歩的な質問をしてしまい、1種のプロの人たちにはご迷惑をお掛けしましたが、いろいろな方々とお知り合いになり、自分にとって大きな財産となりました。

 

・普段、何だか分からなで、もやもやしたものを消し去ることが出来ると思って参加しました。おかげで、一皮剥けたような気がします。みなさん親切で、とてもありがたかったです。この制度が、この業界の中でもっと広がることを期待します。

 

・今回の検定をきかく・運営された日本劇場技術者連盟の皆様、参加者の皆様、たいへんお世話になりました。私の失敗を優しく受け止め、最後まで助けていただいたこと感謝します。演習では、Q出しをしましたが上手くできませんでした。やはり、プロの方のQ出しは的確でした。

 

・非情に実のある研修でした。機械の操作から進行係まで体験させていたくなど、今後の仕事に生かせる貴重な体験になりました。他の施設の方々の交流もでき、今後も情報交換をして、市民により良いサービスができるようにしていきたいと思います。

 

■劇場運営のチカラをつけるゼミナール「能楽の研究」

標記のイベントは、2009年1月26日(月)、東京・千駄ケ谷の国立能楽堂大講義室において13時から開催された。

はじめに映画「国立能楽堂の建設」の鑑賞を鑑賞し、建築設計の意図を理解したところで、実際の舞台と楽屋を見学した。

能楽堂の構造を理解した後は、能楽評論家・児玉 信氏による講演「能の神髄・世阿弥の美学」に移り、スライドやVTR、DVDを駆使して、過去のさまざまな公演形態を学び世阿弥の心を探った。

次に、映画「能楽入門・隅田川」の鑑賞して能の標準的な形を学んでから、国立能楽堂企画制作課長・猪又宏治氏による「能楽の企画制作」の講演があった。一般の入門書には掲載されていない現場のノウハウを学ぶことができた。

予定時間どおり5時に終了し、5時30分からは会場を代々木の和民に移して新年会が開催された。

このイベントは、日本音響家協会東日本支部の共催、日本演劇協会の協賛で実施した。

児玉氏からご提供いただいた「能の照明」に関する文献は、後日、参加者に電子メールで配付することにした。

日本劇場技術者連盟の会員の方々には、不参加の方にも差し上げますので、ご連絡ください。

 

◎能楽の研究に参加して

伊勢崎市境総合文化センター

内山信行

3年前に市の合併と指定管理者制度により、隣町のホールであった境総合文化センターに異動となりました。

こちらのホールは、キャパの関係などもあり、業者さんが来ることはあまりありませんが、その分自主事業主体で運営をしてきたホールであります。フリーライブ(バンド演奏)、演劇フェスティバル、はじめての能の3本が実行委員会の運営による自主事業であります。私も15年ほど伊勢崎市文化会館に勤務しての異動でありましたが、演劇と能に関しては、ほとんど経験のないジャンルの芸能でした。演劇と能はもっと理解を深めないといけないと思い、日本音響家協会の1級音響技術者の取得や日本舞台音響家協会主催の演劇音響講座などに参加しました。

そして、今回念願かなって能楽の研究に参加することができました。

はじめに映画「国立能楽堂の建設」の鑑賞して、そのあと能楽堂の見学でありましたが、入口のドアを開けた瞬間、言葉を失うほどの非日常な世界がそこにはありました。

舞台そのものに存在感があり、まるで数百年も時をさかのぼったような気持ちになったのです。

本来、ホールというものはそういう場所であるべきなのだろうと考えさせられるほどの存在感でありました。

そこで、能舞台のつくりや能の照明などについても説明があり、やはり、現場の私にとって本当に知りたい情報とは、こういうことであると思います。能の歴史も大事でありますが、現場の対応はどのようにしているかが、もっとも関心のあるところで、まさに劇場技術者連盟主催ならではの研究会でありました。

その後の「能楽の企画制作」の講演で、能や狂言にも演目によって季節があることや踊りの有無、そして能舞台の仮設の組み方などの話しもあって、自分の知りたいと思うことを教えて頂けました。

能楽堂の見学の際、講師の方が、シンプルな舞台では役者の動きですべてが表現されているので、能のあらすじや何を言っているかを理解しようとせず、ただ純粋に能の世界に入ればいいんですと教えてくださいました。次の自主事業ではもっと、能の世界を楽しめると思っております。

また、今回は同郷の会館職員の方が、一緒に参加してくださいました。時間がかかっても、もっと同志を増やしていき、地域文化の振興に寄与していきたいと思います。

 

■大阪フェスティバルホールさよなら見学会

2009年1月21日、昨年末で閉館となったフェスティバルホールの見学会を実施しました。

舞台芸術の殿堂として君臨したホールへの感謝の気持ちを込めて、山形副理事が中心となって企画したものです。

本連盟と日本音響家協会西日本支部が共同で開催しました。

 

■新宿コマ劇場の舞台機構見学の報告

今年で閉館する東京・新宿コマ劇場の見学会は、2008年10月8日、日本劇場技術者連盟と日本音響家協会が開催いたしました。

このイベントは、コマプロダクションの風間典年さんのご尽力で開催できたもので、神村和彦さんのご案内で、劇場の隅々まで拝見し無事終了いたしました。

参加者は仙台から宮崎まで、全国各地の方々50名程でした。

その後、楽屋を見学しましたが、このムードいっぱいの空間を、参加した若き学生たちもすごく感動していました。

美空ひばりさんが使っていた楽屋
美空ひばりさんが使っていた楽屋

舞台事務所の入り口には次のような初代社長の五戒が掲示してありました。

 

◎コマスタジアム五戒

 一、吾々の享くる幸福は お客様の賜なり

 一、職務に注意し お客様を大切にすべし

 一、其の日になすべき仕事は 翌日に延すべからず

 一、不平と怠慢は健康を害す 職務を愉快に勉めよ

 一、会社の盛衰は吾々の双肩にあり、極力奮斗せよ

 

この劇場は、あの美空ひばりさんも「歌いやすい」とお気に入りだったという話をうかがい、ギリシャの円形劇場を模写した意味、すなわち観客のすべてが舞台中央に向かっている形が演者にとって演じやすいのだと察しました。したがって、ひばりさんが歌うときの立ち位置が舞台端でなく、2メートルほど後ろへ下がった位置であると聞いて納得しました。その位置が観客全員が向いているのです。ギリシャの古典劇場の形式の意義を新宿コマ劇場の構造で理解できました。

この温故知新の会は、とても、有意義で多くを学ぶことができ、素晴らしいイベントでした。

新宿コマ劇場の関係者、ご説明をいただいたコマプロダクションの神村和彦さん、ショウビススタジオの青山明夫さんに感謝いたします。

 

◎新宿コマ劇場の概要

ギリシャ時代の劇場様式からヒントを得た観客席と回り舞台が大きな特徴である。新宿コマ劇場の「コマ」は、円形舞台が独楽の回る姿に似ていることから付けたという。

舞台は同心円状に配された三重の廻り舞台と6つの小ゼリによって構成され、これらの回転と上下運動によって多種多様な舞台効果を生み出せるのを特徴としている。開場以来、幾多の改良・改修を重ね、客席・舞台機構共に充実にしたものになっている。

この劇場では「演歌の殿堂」と異名を取り、美空ひばり、北島三郎、小林幸子、氷川きよし、松平健などといった大物演歌歌手の特別公演が行われた。

また開場以来ミュージカル公演に力を入れており、『アニーよ銃を取れ』『努力しないで出世する方法』『南太平洋』『ピーターパン』など新宿コマ劇場を日本初演の地に選ぶミュージカル作品も多い。

毎年大晦日には、テレビ東京系列で放送されている『年忘れにっぽんの歌』の生中継が行われた。

しかし、設備の老朽化などにより、2008年大晦日の『年忘れにっぽんの歌』の生放送をもって閉館することになった。

閉館後は東宝の支援を受け、同時に閉館予定の隣接する新宿東宝会館を合わせた約5385平方メートルの敷地の再開発を進める予定。《wikipediaから抜粋》

 

■舞台仕込み図研究会の報告

2008年7月28日(月)、14時30分~16時30分、新宿文化センター・第三会議室で開催され、舞台美術家の滝善光氏が考えた発注図面を基準のご披露があり、現状を把握して次へのステップを協議した。

大道具製作発注の仕込み図を描かない舞台美術家、描けない舞台美術家、大道具製作に頼り切った美術家などが多い現状に、参加者は唖然。

舞台技術者の仕込み作業のための仕込み図の在り方などについて討議し、さまざまな愚痴と提案が出た。

プロとしてお金の取れる舞台美術家になるためには、それなりの努力が必要で、正確な仕込み図を描くことは必須である。

劇場の技術者の立場からすれば、舞台装置の仕込み図をベースに、照明、音響の仕込みも書き込むようにして、1枚の仕込み図で劇場技術者が作業できるような環境を作るべきである。連盟としても、これらのPCソフトを使えるようにするセミナーを設けたい。

舞台技術関連の学校の教育においても、Vector WorksとPhotoshopの使い方を学ぶ必要があるとの意見も出た。

また、舞台の大道具の人たちは、照明も音響についても学び、将来は舞台進行=技術監督として劇場・ホールの技術部門をすべて掌握できる人材になってほしい。そうでなければ、音響や照明の技術者が将来、技術監督としてリードすることになるであろう。そうならないように、大道具の方々には、もうそろそろ奮起して貰いたいものである。

滝氏の考案した基準案を連盟の基準にするとの提案があった。

基準案→

最後に参加者全員が意見を述べ、滝氏の言葉で締めくくり研究会を終了した。

終了後は、近くの居酒屋で懇親会を開催し、より深い情報交換が行われた。

 

■第1種と第3種劇場技術者検定、順調にスタート

舞台進行を主としたこの検定は、2008年6月3日~4日、埼玉県・桶川市民文化ホールで実施され、経験豊富な講師陣の下、充実した内容の講習が行われ、初代の第1種と第3種の劇場技術者が誕生した。

初日の終了後は、施設内のレストランで500円会費によるワンコインパーティーが開催され、北海道や九州からも参加された同業仲間、プロと市民との交流の場となった。

2日目の最後は舞台進行、音響、照明に守備を分担して、ショートパフォーマンスで締めくくり、筆記試験を行ってすべてのプログラムを終了した。

地がすり敷きの実習
地がすり敷きの実習
看板吊りの実習
看板吊りの実習
照明の実技
照明の実技

■連盟総会報告

日本劇場技術者連盟は、2008年5月7日(水)、14時から埼玉会館会議室で平成20年度総会を開催した。会員以外で本連盟に興味のある方々にもオブザーバーとして参加していただき、新年度の事業方針などについて討議した。

新年度からは、劇場技術者検定をスタートさせ、舞台進行スタッフの地位向上に全力投球することとなった。

新会員の中から、このような団体ができるのを待ち望んでいたという声もあり、本連盟の設立は好機のようである。

総会終了後は、浦和レッズのサポータたちの居酒屋で交流会を開催、充実した意見交換が行われた。 

 

■TEECセミナー「指定管理者時代を生きる」の報告

日本中が文化行事で忙しい秋のさなか、2007年11月12日(月)に日本劇場技術者連盟主催のセミナーが東京・千駄ヶ谷「国立能楽堂大会議室」で開かれました。

今回は、有限責任中間法人日本音響家協会の共催、社団法人日本演劇協会と埼玉県舞台技術協議会の後援を賜り、無事大盛況のうちに終えることができました。

北は北海道、南は九州まで全国各地から総勢52名の方々が参加されました。

このセミナーは、「指定管理者制度の光と陰」に焦点を当てており、公共の劇場やホールを支える人々が、問題意識を明らかにして考え、さまざまな情報を共有しながら解決策を探り、連携を深めて生き抜こうというのが目的です。

第一幕は、本連盟の理事で日本音響家協会会長の八板賢二郎氏の基調講演「劇場技術者の今昔」で、これからの時代に生きるための劇場技術者の意識改革を訴えました。

続いて第二幕は、ボーズ株式会社代表取締役社長の佐倉住嘉氏に「経営力は創造力」をテーマに講演していただきました。苦難の道から人脈を広げ、さまざまな人気商品を開発された商売哲学を、ユーモアを交えてお話しいただき、受講者に感動と勇気を授けてくれました。

最後のディスカッションは、指定管理者として厳しい経済状況下で、経営改革を断行し成功しているホールの実例などが紹介され、受講者からも近況報告と提案などがあり、互いに元気を与え合い、明日に希望を抱きつつ熱気の中、無事終了しました。

 

終了後、急きょ懇親会を開催することになり、そこで新しい出会いが生まれ、更に有意義な交流となり、商談に発展する人たちもいるなど、仲間意識がさらに高まりました。

劇場技技術者に新しい波が生まれたようである。

 

■裏方の教養講座「歌舞伎モノがたり」開催報告

本連盟の初めてのイベント、裏方の教養講座は2007年7月30日埼玉会館で開催され、豪雨にもかかわらず、多くの参加者があり成功裏に終了しました。埼玉県内の日本舞踊の方々が、こぞって参加するなど、地元と密着した催しとなり、主催者の目的が達成できました。参加者は75名。

講師は、日本演劇協会常務理事の織田紘二先生で、めったに聞けない歌舞伎舞台の成り立ちや、歌舞伎スタッフについての解説があり、参加者は興味深く、熱心に受講していました。

ワンコインパーティーは、500円会費で、劇場スタッフと演者、観客である一般市民のポーダレス交流会となりました。今後は日本舞踊のワークショップを、舞踊家、劇場技術者、演出家などが一体となって開催する提案があるなど、連盟に新しい動きが感じられました。本連盟は「自分たちだけの話から抜け出でよう」がスローガンで、それにふさわしいイベントとなりました。

この後は、二次会があり、明るく楽しい一時を過ごしました。