商品開発の達人に学ぶ 経営力は創造力 佐倉住嘉(ボーズ株式会社代表取締役)
経営力は創造力という難しいお話をさせていただきます。 上はトヨタから下は町の豆腐屋さんまで同じ原理です。 そう考えれば理解できます。安く仕入れて高く売るという商売には、いろんな仕事があります。豆腐屋さんは大豆を蒸して叩いて、いろいろやって売り出します。 しかしながら、必ず売れるとは限りません。これは博打です。競馬と同じで、原理は博打です。まず最初に皆さんに知っていただきたいことです。 まず、国家があって税金を取る。つまり国は胴元と同じです。ただし、博打は自分が儲けるため、ビジネスは社会や人に役立ててという違いを理解してください。 商売は、第1に自分が一所懸命に走る、第2に自分の腕を磨く、第3に運です。ビジネスは運が半分、残りの五割が一所懸命に走ること。そして自分の腕を磨く(体力を付ける)が全てです。 私はこれまで17の会社をやりましたが、上手くいったものは2つ位です。運はタイミングです。 では運を付ける方法を教えましょう。 そ れは、風が吹いたら桶屋が儲かるの理論です。風が吹けばホコリが目に入る、すると目が見えなくなる。目が見えなくなると生活するために門付(人家の門口で 芸をして金品を乞うこと)をしなければならない。門付には三味線が必要になる、三味線には猫の皮がいる。そして猫が少なくなるとねずみが増える。ねずみは 桶の中の穀物を狙って桶をかじる。桶が傷むから桶屋が修理をすることで桶屋が儲かるということでして、今やっていることはいずれ自分に戻ってくるというこ とです。 人間にはツキと運があります。ツキは一日早く収穫したから二日後の台風で作物が全滅することが防げたなどということです。 運は人がもたらしてくれるものです。ホールの技術者も営業をとおっしゃいましたが、営業とは人との付き合いですから、人が必ず運をもたらしてくれます。 そして、会社というのは飛行機と同じです。エンジンやプロペラが止まったら飛行機は落ちます。会社は飛び続けていなければつぶれます。
ボーズの話をさせていただきましょう。MIT(マサチュセッツ工科大学)の教授だったボーズ博士が1964年に会社を興しましたが、当初は全く売れなかった。 1970年アメリカで製品が認知され71年ヨーロッパで成功し、1973年に日本のラックスが代理店になり販売を開始しましたが失敗。 1977 年、独自で販売を開始したが、日本のマーケットの難しさに苦戦しました。その中で私に白羽の矢が立ちました。そして売るための販売戦略が始まりましたが、 なかなか売れませんでした。ある日、営業で電気店を回っていたときに、壁に取り付けられるスピーカはないか? という言葉を聞いて、かつて飲食店を経営し たときにスペースの問題で苦労したことを思い出し、スピーカを壁に取り付ける方法を開発したのです。 その後、私はアイデアを次々と出しました。テーブルの上や天井に埋め込むスピーカなど、さまざまなものでした。 しかし、アメリカ本社はなかなか動いてくれなかった。しかし、確信を持って自分のアイデアを実行に移し、その姿勢にアメリカ本社も数年後に動き出したのです。
商売はマーケティングですから、いろいろな方法でやり続けることです。営業と技術は車の両輪です。どちらが欠けても駄目です。物が良ければ売れるというのは 技術者の考えです。しかし技術だけでは売れません。売るには、売れるだけの価値があることを伝えなければなりません。お客は、こちらの言うことをなかなか 信じません。ですから、一生懸命しゃべり続けて、売る人間が相手から信頼してもらえるようになるのです。 そして商売の一番大切なことは、買った人に満足してもらうことです。 |