労働基準法(抜粋)


労働基準法は、労働に関する諸条件を規定している法律で、いわゆる労働法の中心となる法律で、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準を定めたものである。労働基準法における基準は最低限の基準である。
以下は劇場技術者に必要な部分を抜粋したもので、条文を平易に書き直してある。

1-労働条件の原則
労働条件は、労働者が人間として生活を営むことができるものでなければならない。この法律で定める労働条件の基準は最低のもので、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させるのではなく、向上を図るように努めなければならない。


2-労働条件の決定
労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場で決定すべきものである。労働者と使用者は、労働協約、就業規則、労働契約を守り、誠実にその義務を実行しなければならない。


3-均等待遇
使用者は、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由に、賃金、労働時間、その他の労働条件について、差別してはならない。


4-男女同一賃金の原則
使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別してはならない。


5-強制労働の禁止
使用者は、暴行、脅迫、監禁、その他精神と身体の自由を不当に拘束して、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。


6-中間搾取の排除
法律に基づいて許される以外は、他人の就業に介入して利益を得てはならない。


7-公民権行使の保障
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権、その他公民権利を行使したり、または公の職務を執行したりするために必要な時間を請求した場合は、拒んではなら ない。ただし、権利の行使または公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。


8-法律違反の契約
労働基準法で決められた基準に達しない労働条件の労働契約は、その部分については無効となる。この場合、無効となった部分は、法律で決められている基準にする。


9-労働条件の明示
使用者は、労働契約をするとき、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない。この場合、賃金と労働時間に関する事項、その他の厚生労働省令で決めている事項については、厚生労働省令で決められている方法で明示する。


10-前借金相殺の禁止
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。


11-解雇
客観的に合理的な理由のない、社会通念上相当であると認められない解雇は、その権利を濫用《らんよう》したものとして、無効となる。


12-解雇制限
労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間、産前産後の女性が規定によって休業する期間とその後30日間は、解 雇できない。ただし、使用者が、規定に基づいて打切補償を支払う場合、または天災事変、その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合 は、行政官庁の認定を受けて解雇できる。


13-解雇の予告
労働者を解雇しようとする場合、使用者は30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなけ ればならない。ただし、天災事変、その他やむを得ない理由のために、事業の継続が不可能となった場合の解雇は可能である。
予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合は、その日数を短縮できる。


14-解雇理由の証明書
労働者が、退職の場合に使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金または退職の理由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含)について証明書を請求した場合は、使用者は交付しなければならない。
労働者が解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、解雇の理由の証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければならない。ただし、解雇の予告 された日以後に労働者が別の理由で退職した場合は、使用者は解雇の理由の証明書の交付をしなくてもよい。
解雇の理由の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。使用者は、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身 分、労働組合運動に関する情報を漏らし、または解雇の理由の証明書に秘密の記号を記入してはならない。


15-金品の返還
使用者は、労働者の死亡または退職のとき、権利者の請求があつた場合は7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金等、労働者に権利がある金品を返還しなければならない。


16-賃金の支払
賃金は、通貨で直接労働者に支払わなければならない。また賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。


17-非常時払
使用者は、労働者が出産、疾病、災害など非常の場合の費用に充てるための請求があった場合、支払期日前であっても、すでに労働した分の賃金を支払わなければならない。


18-最低賃金
賃金の最低基準は、最低賃金法の規定に従わなければならない。


19-労働時間
使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間についいて、40時間を超えて労働させてはならない。また、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。


20-休憩
使用者は、労働時間が6時間を超えた場合に45分以上、8時間を超えた場合に1時間以上の休憩時間を、労働時間の途中に与えなければならない。この休憩時 間は、一斉に与えなければならない。また、使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。


21-休日
使用者は、労働者に対して、毎週1回以上の休日を与えなければならない。ただし、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。


22-時間外・休日の労働
使用者は、職場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合、労働時間の延長、または休日労働をさせることができる。


23-時間外・休日・深夜の割増賃金
使用者が、労働時間を延長し、または休日に労働させた場合は、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上〜5割以下の範囲内で、割増賃金を 支払わなければならない。使用者が、午後10時から午前5時までの間において労働させた場合は、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算し た割増賃金を支払わなければならない。


24-有給休暇
使用者は、雇入れた日から起算して6ケ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続または分割した10日の有給休暇を与えなければならない。


25-最低年齢
使用者は、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が過ぎていない児童を使用してはならない。映画の製作または演劇の場合は、行政官庁の許可を受けて、満13歳未満であっても修学時間外に使用することができる。


26-年少者の証明書
使用者は、満18歳に満たない者に労働させる場合、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。また、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書、親権者または後見人の同意書も備え付けなければならない。


27-未成年者の労働契約
親権者または後見人は、未成年者に代って労働契約を結んではならない。親権者・後見人・行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認めた場合、解除することができる。

 

28-未成年者の賃金受け取り
未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者または後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない。


29-児童の労働時間及び休日
児童の労働時間は、「修学時間を通算して1週間について40時間」と、「修学時間を通算して1日について7時間」とする。


30-深夜業
使用者は、満18歳に満たない者を午後10時〜午前5時までの間において使用してはならない。
ただし、交替制によって使用する満16歳以上の男性は使用できる。
厚生労働大臣が認めた場合は、地域または期間を限定して、午後11時〜午前6時に変更できる。
交替制の場合は、行政官庁の許可を受けて、午後10時30分まで、または午前5時30分から労働させることができる。


31-危険有害業務の就業制限
使用者は、満18歳に満たない者を、爆発性、発火性、引火性の材料を扱う業務に就かせてはならない。


32-徒弟の弊害排除
使用者は、徒弟、見習、養成工など、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない。
使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事、その他技能の習得に関係のない作業をさせてはならない。


33-療養補償
労働者が業務上ケガをし、または病気にかかった場合、使用者は必要な療養をさせ、その費用を負担する。


34-休業補償
労働者が療養によって労働できない場合、使用者は労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償をする。


35-障害補償
労働者が業務上ケガをし、または病気にかかり治ったが、身体に障害があるとき、使用者は、障害の程度に応じて、平均賃金に日数を乗じて得た金額の障害補償をする。


36-休業補償及び障害補償の例外
労働者が重大な過失によるケガ・病気にかかったときで、その過失について行政官庁の認定を受けた場合は、休業補償または障害補償を行わなくてもよい。


37-遺族補償
労働者が業務上死亡した場合、使用者は遺族に対して平均賃金の1000日分の遺族補償を行わなければならない。


38-葬祭料
労働者が業務上死亡した場合、使用者は葬祭を行う者に平均賃金の60日分を葬祭料として支払わなければならない。


39-打切補償
補償を受けている労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷・疾病がなおらない場合、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後の補償を行わなくてもよい。


40-補償を受ける権利
補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。
また、補償を受ける権利を譲渡、または差し押えてはならない。


41-審査仲裁
業務上の負傷、疾病、死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定、その他補償の実施に関して異議のある場合は、行政官庁に審査または事件の仲裁を申し立てる ことができる。行政官庁は、必要があると認める場合に、職権で審査または事件の仲裁をすることができる。